ジェムアルトはセキュリティ関連製品を提供する一方、IoTのサービス提供に有効なソフトウェア収益化の基盤ソフトを提供している。この基盤の活用によって、ひとつのビジネスモデルで複数のプレーヤーが収益化を実現できるという。今回は、同社のプロダクトマネジメントディレクターであるライラ・アラド・アラン氏に同プラットフォームやIoT収益化の実際について話を聞いた。
--ソフトウェアマネタイゼーション基盤とは何ですか。
ソフトウェアマネタイゼーションのプラットフォームは、「セキュリティ&プロテクション」「ライセンスの使用」「エンタイトルメント管理」の3つのソリューションで構成されています。
セキュリティ&プロテクションは、デバイスベンダーのソフトウェアなどを保護するもの。ライセンスの使用(ユーセージ)は、ソフトウェアベンダーやハードウェアベンダーのソフトウェアにライセンスを実装するものです。これによりハードウェアの機能がどのように使われているのかという情報を収集でき、IoT機器から収益を得られるようにできます。
エンタイトルメント管理は、ライセンシングによって実装されたセキュリティ&プロテクションとライセンスの利用を含め、ライセンスの発注からライセンスの発行プロビジョニング、アプリケーションからのライセンスの更新といった、ライセンシングの機能を全体的に自動化して管理することを可能にするものです。
--実際には、どのようにソフトウェア収益化を実現していくのでしょう。
デバイス、ソフトウエア、サービスベンダーは、IoT基盤上で、さまざまな収益源をソフトウェアを通して得ることが可能になります。たとえば、ここに「コネクテッド・テニスラケット」があるとします。このラケットはセンサやソフトウェアを使って、プレーヤーのさまざまなデータを収集します。プレーヤーはベンダーが提供するポータルサイトで、ラケットから収集したデータを確認することができます。確認する際に課金することで、ベンダーはこのラケットから収益を得ることが可能になります。
デバイスベンダーは、プレーヤーのソフトウェアから得られたデータをIoT基盤を通して、今度はトレーナー向けのサービスに活用することができます。トレーナーがテニス教室などで、このラケットを使った場合のトレーニングプランの構築や、カリキュラム作成などに応用することができます。これにより、トレーナーからも収益が得られることになります。
また、コミュニティセンターもIoTプラットフォームを活用することにより、地域に何人のテニスプレイヤーがいて、それぞれのプロファイルはどうかというデータを集積し把握できます。これによりテニスコーチは、どういう教室を展開したらいいのかを企画することが容易になります。そういったサービスを企画するベンダーは、まずそのコミュニティセンターから費用を徴収し、プランサービスベンダーがデバイスベンダーに支払います。
つまりデバイスベンダーは、デバイスの販売でも収益が得られますし、ソフトウェアからも収益を得られます。デバイスから、サービスから、そしてサードパーティのサービスからも収益が得られることになります。そしてこのソフトウェアのマネタイゼーションは、サービスのさまざまな分岐点で活用することができます。
まずセキュリティの確立、フォロー、ライセンシング、エンタイトルメント(資格)管理。これらがデバイスレベル、ソフトウェアレベル、データレベル、サービスレベル、サードパーティのサービスレベルで実装することが可能ですし、また、このソフトウェアマネタイゼーションは、IoT基盤に実装することも可能で、関わっているさまざまなベンダーのサービスによる収益化を可能にします。
--具体的には、どのように収益化するのでしょう。
顧客のニーズによって違いますが、多くのケースでまず「発見フェーズ」と呼ばれる期間を設け、その期間内に顧客のニーズを測ります。このフェーズは、顧客と一緒にどういうニーズがあるのか、模索、理解していくプランになります。
たとえば、どういったモジュールや機能に対してライセンスを発行すれば課金できるのかということを、顧客と一緒に発見していく段階になります。なぜかというと、その顧客のエンドユーザーにとって、どういうものがバリュー、価値になるのかは、その顧客企業が一番ご存じだからです。
3週間前に米国で実施したジェムアルト顧客企業のディスカバリーフェーズでは、その企業では発注、ライセンスのプロビジョニング、トライアル、配布、現場でのライセンス更新といったすべての業務が手動で行われていました。そこで、その顧客と一緒にどうソフトウェアマネタイゼーションするのか、青写真を描き実装までをサポートしました。顧客のビジネスを理解しまた教わりながら、IoTの分野でさまざまなビジネスモデル構築をサポートしていきたいと思います。