矢野経済研究所は11月11日、国内のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)およびクラウドソーシングサービス市場の調査結果を公表した。国内BPO市場全体の規模は2014年度から2020年度の年平均成長率(CAGR)2.2%で推移し、2020年度には4兆1136億9000万円(事業者売上高ベース)に達すると予測される。クラウドソーシング市場は2016年度の国内市場規模(仕事依頼金額ベース)が前年度比46.2%増の950億円となる見込みで、2013年度から2020年度までのCAGRは45.4%で推移、2020年度には2950億円に達すると予測した。
それぞれの市場についての主な調査結果は以下の通り。
- BPO市場
- クラウドソーシングサービス市場
調査では、発注企業からシステム運用管理業務を委託され代行するサービスの「IT系BPO」と、後者はその他の業務を委託され代行するサービスを「非IT系BPO」と定義し、それぞれを分けて集計している。
IT系BPOの国内市場規模は、2014年度~2020年度のCAGR3.1%で推移し、2020年度には2兆4174億円に達すると予測。非IT系ではCAGR1.1%で推移し、2020年度には1兆6962億9000万円に達すると予測した。IT系BPOは比較的参入障壁が高く高単価を維持しやすいこと、非IT系BPOにおいてもIT系BPOが付加される形のサービス提供が増えていることなどが、より高い成長を予測した背景という。
一方、非IT系BPOでは、異業種参入の増加による価格競争の激化というマイナス要因こそ存在するが、人材不足の影響によって企業が外部リソースに頼る傾向は強まっているとした。直近では大手企業のマイナンバー(個人番号カード)収集が収束するものの、中小企業や個人事業主などのマイナンバー収集が継続するほか、預金口座へのマイナンバー紐づけの義務化に向けた収集需要が見込まれる。また、2015年の労働者派遣法の改正や2018年4月から始まる労働契約法の5年転換ルール(無期転換ルール)の影響により、BPOサービスに切り替える企業が増えていることなどから今後も成長を予測している。
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の市場規模推移と予測(事業者売上高ベース、市場規模を過去に遡って再算出したもの)
クラウドソーシングサービスとは、インターネットを介在として、業務委託者側である企業等と業務受託者側である不特定多数の労働者などをマッチングするサービス。本調査においては、クラウドソーシングシステム上での業務委託企業による仕事依頼全般(成約に至らなかった仕事の依頼全般も含む)の総額から市場規模を算出している。
クラウドソーシングサービスは新しい業務委託形態として注目されており、現在ではクラウドソーシング事業者、および業界団体である一般社団法人クラウドソーシング協会の活動により、クラウドソーシングサービスへの信頼が高まってきている。また事業者各社が大手企業向けのサービスを開始していることに加え、将来的に電子契約が浸透し、大手企業が懸念するコンプライアンス(法令遵守)への不安が解消されると見込まれることから、大手企業による大口案件の流通量が増加していくと想定され、引き続き高い伸びを示していくと予測した。
調査は、7月から10月にかけてSIerや事業者等に対し直接面談や電話・電子メールによる取材を実施し、文献調査を併用した。
クラウドソーシングサービスの市場規模推移と予測(クラウドソーシング上での仕事依頼金額ベース)