調査

複数企業向けIoTや適度な自動化を--ノークリサーチ

NO BUDGET 2017年01月12日 07時45分

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 ノークリサーチは1月10日、2017年の中堅・中小企業におけるIT活用の展望のうち、業務システム/IoT/RPA(Robotic Process Automation)などに関連するトピックをまとめた調査結果と今後の見解を以下のように発表した。2017年の中堅・中小企業におけるIT活用の展望のまとめは3部構成となっており、今回はその最初となる。

IoT活用を普及させるためには複数企業を対象とした提案が必要

 ノークリサーチでは卸売業/小売業/サービス業、製造業、建設業といった業種カテゴリ別に具体的なIoT活用シーンを提示し、それらに対する投資意向、投資金額、課題やニーズを詳しく調査/分析している。このうち、年商500億円未満の中堅・中小企業全体に対して、卸売業/小売業/サービス業を中心としたIoT活用への投資意向を尋ねた結果を示したものが下のグラフ。

 「自社単独で投資予定」とした回答は15%程度にとどまるものの、「同業他社と共同で投資予定」および「他業種と共同で投資予定」も含めると全体の3割弱に達することが分かる。

 同社では、IoTの効果を十分に享受するためには他業種も含めた包括的な取り組みが重要であると指摘する。例えば、IoTにより店舗内の顧客動線を改善する際、売れ筋商品の販売機会を逃さぬよう、仕入れ先となる業者の供給力向上も考慮しておくことが望ましい。

 中堅・中小企業にとっては単独でIoTという新たなIT活用分野へ投資することが難しいケースも少なくないため、IoTソリューションを訴求する側としては取引先や提携先を含めた複数のユーザー企業を対象とした活用提案を模索していくことが有効と考えられる。


IoT活用意向(卸売業/小売業/サービス業を中心とした活用シーン)

業務システムではバッチ処理とRPAの中間に位置する自動化が有力な差別化ポイント

 昨今、さまざまな業務システムにおける自動化への取り組みとして注目されているのが、「RPA(Robotic Process Automation)」だ。複数企業へのIoT提案には相応の準備や時間を要するのに対し、こちらは個々の企業に対して迅速に提案できる商材となる。

 RPAは、従来から存在する「あらかじめ決まった処理のみを行う自動化」とは異なり、機械学習などの手法を用いることによってデータや視覚情報を認識/理解し、これまでヒトが担っていた業務の一部をプログラムソフトウェアが代替することを目指した取り組みを指す。

 まだ黎明期であり、中堅・中小市場に普及するまでにはまだ時間を要すると予想されるが、本格的なRPAほどでないにしても、単なるバッチ処理より高度な自動化については、現段階においてもユーザー企業側のニーズを垣間見ることができるとする。

 下のグラフは会計管理システムを導入済みの中堅・中小企業に対し、今後のニーズを尋ねた結果の一部を抜粋したものだ。一定のルールに従う業務に関してはアウトソーシングと比べて自動化によるソリューションが有効であることが分かる。とはいえ、「予算の超過が発生したことを自動的に通知してくれる」の回答割合よりも「経費を迅速に把握し、予実管理の精度を向上できる」の方が高く、必ずしも最先端の技術を用いた自動化が今すぐ必要とされているわけではないことも伺える。


会計管理製品/サービスが持つべき機能や特徴(複数回答可、年商500億円未満全体)

 同じことは別の業務システム分野にも当てはまる。例えばセキュリティ製品/サービスについても、下のグラフのように高度な自動化でなく、直面する課題に対する適切なレベルの自動化の方が、今後のニーズは高いことが分かる。


セキュリティ製品/サービスが持つべき機能や特徴(複数回答可、年商500億円未満全体)

ワークスタイル改革の訴求を成功させるには「幅広い業種/職種への理解」を

 ユーザー企業とIT企業の意識の乖離は、新しい取り組みにおいて発生しやすい。ノークリサーチでは、様々なIT用語に対するユーザー企業の認知状況についての調査も行っており、下のグラフはこのうち「ワークスタイル改革」というIT用語について、中堅・中小企業に印象を尋ねた結果を2015年と2016年で比較したものだ。


「ワークスタイル改革」というIT用語に対する印象(年商500億円未満全体)

 「コスト削減/売上増に寄与する」という回答が減る一方、「IT企業が作った宣伝用語と捉えている」が増えていることがわかる。背景には「ワークスタイル改革」の指し示す内容が非常に広範であり、場合によってはITを提供する側と利用する側の間に意識の相違が生じている実情がある。例えば、ワークスタイル改革手段の一つであるテレワークは、業態によって適用が難しい場合もあり、そうした事情はIT企業側も十分理解していると考えられるが、ユーザー企業側に「テレワークを実践できない企業は遅れている」という主張をしていると受け取られてしまうと敬遠される可能性があるわけだ。

 具体的なIT商材を訴求する際にも、こうした背景を理解しておくことが非常に重要となる。下のグラフは自社内設置型VDIの導入の際、どのような契機が多いかを示したもので、「テレワーク推進」が比較的少ないことが確認できる。ITを提供する側の視点では「ワークスタイル改革 ⇒ テレワーク推進 ⇒ VDIによる実現」という流れは確度の高い訴求方法のように思えるが、ユーザー企業側の認識は必ずしもそうなっていないというわけだ。このような意識の乖離はどのようなIT活用分野にも存在する可能性がある。乖離を少しでも縮めるためには、中堅・中小企業にも様々な業種や職種があることを常に意識しておくことが肝要といえる。


様々な端末の活用方針や今後の展望(複数回答可、年商500億円未満全体)

顧客の実態を思い込みでなくしっかり理解できているか意識することも重要

 意識の乖離(かいり)について、さらに踏み込んで考察していこう。以下のグラフは中堅・中小企業に対し、業務システムの主要な委託先/購入先の評価(満足している事柄は青帯、不満である事柄は赤帯)を尋ねた結果だ。


業務システムの主要な委託先/購入先の評価(複数回答可、年商500億円未満全体)

 IT企業側は「顧客の実態は良く理解できているが、自社が扱える商材の幅が狭いのではないか」と認識しているケースが比較的多いのに対し、項目1-1「複数メーカの製品/サービスも一元化して保守/サポートしてくれる」や項目2-1「ハードからソフトまでシステム全体を一元化して保守/サポートしてくれる」の回答割合が高いことからも分かるように、ユーザー企業側は商材の幅広さに関しては現段階では大きな不満を感じていない。

 一方、項目3-2「運用/サポート段階に入ると、トラブルなどが発生しない限りは営業やSEは自社を訪問してこない」や項目4-2「運用/保守サポートの費用については固定金額であり、やや割高であると感じている」はいずれも「不満を感じている事柄」であり、それぞれ「満足している事柄」の回答割合を上回っている。つまり、ユーザー企業は「運用開始後はあまり面倒を見てくれず、運用/保守サポート費用も割高である」と感じていることになる。

 そのため、さらなる費用がかかることなどを懸念し、多少の不便があっても手作業によるカバーや既存機能と運用面の工夫による回避で対応してしまうユーザー企業も少なからず存在する。だが、こうした実態はIT企業側からは見えにくいとのこと。

 こうした意識の相違は既に述べた「中堅・中小企業にとって適切なレベルの自動化」に取り組む上でも大きな障壁となってくる。IT企業側としては「自動化」への取り組みと並行して、「顧客における業務システムの活用実態をもう一段深く把握する」ことを意識することが重要と考えられる。

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