日本マイクロソフトは1月16日、Microsoft Azureの東日本リージョンにおいて最大32コアCPU、0.5TBメモリを搭載した仮想マシン「Gシリーズ」を同日から提供すると発表した。また、Gシリーズ最上位にあたる「GS5」インスタンスでは、独SAPの「SAP HANA」のサポート認定を受け、基幹システムのクラウド化に対応する。
Azureは、2014年2月に東日本と西日本の2箇所に国内データセンター(DC)を開設。これまでIaaS環境のラインナップとして「A」「D」「F」といった仮想マシンのインスタンスを用意してきた。
今回、東日本リージョンから、Intel Xeon E5 V3ファミリプロセッサを搭載した仮想マシンのインスタンス「Gシリーズ」の提供を開始した(米国リージョンでは2015年1月にリリースされている)。
Microsoft Azureの仮想マシンインスタンス
Gシリーズは、SQL ServerやHadoopといった大規模データベースワークロードをサポートしている。これにより、「今後、基幹業務システムのクラウド化が進み、これまでオンプレミスで発生していた数々の課題はクラウドで解決できるようになる」(日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長 佐藤久氏)という。
日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長 佐藤久氏
Gシリーズのエントリークラスに位置する「G1」インスタンスは、2コア・28GBメモリ・384GBのストレージで62.22円/時(4万6291.68円/月)、最上位にあたる「G5」インスタンスは、32コア・448GBメモリ・6.144TBストレージで886.38円/時(65万9466.72円/月)の従量課金制で利用できる(参考:Linux Virtual Machinesの料金)。
さらに、Gシリーズに永続ストレージ(Premium Storage)を付加した「GS」シリーズも東日本リージョンから提供する。G5にPremium Storageが付いたGS5インスタンスは、SAPから「SAP HANA」のサポート認定を受けており、国内DCからSAP S/4 HANAワークロードを利用できるようになる。
GS5上でSAPから認定を受けているのは、「SAP S/4 HANAの開発/テスト環境」「OLTP NetWeaverソリューション用 SAP HANA Enterprise Editionの開発/テスト環境」「OLAP用SAP HANA Enterprise Editionの本番運用環境および開発/テスト環境」。GS5上でSAP S/4 HANAを本番環境で使う場合は、Controlled Availabilityプログラムに個別参加する必要がある。
さらに、GS5で対応するサイズより大きいメモリサイズを必要とするSAP HANAワークロードをAzure上で利用する場合は、米国東部もしくは米国西部リージョンで提供しているSAP HANA用にチューニングした専用ハードウェア環境「SAP HANA on Azure(Large Instance)」を選択し、Controlled Availabilityプログラムに個別参加する必要がある。
GS5インスタンスでは、SAP HANAに対応する
Gシリーズの国内DCからの提供時期が米国リージョンでのリリースから数年遅れたことについて記者から質問されると、佐藤氏は、「パートナーや市場の需要が異なる。われわれとしてはベストなタイミングだ」と回答。協業するパートナーと共にMicrosoft Azureをマネージドサービスとして提供し、「基幹システムでもサブスクリプション型のマネージメントサービスを推し進める」と今後の展望を語った。
米Microsoft クラウド&エンタープライズグループ ゼネラルマネージャーのMark Souza氏も、「Azureは、ハイパースケール、エンタープライズ対応、ハイブリッドという3つの成功基準を維持しつつ、過去12カ月では600以上のサービスや機能をリリースしてきた。今後6カ月間で更なる機能の拡充を行っていく」と強調。記者からの、競合のAmazon Web Services(AWS)と比較してインスタンスのラインナップが足りないのでは、との質問に対しては、「SAPについてはAWSよりも先行している。AWSが(同レベルのインスタンスを)アナウンスする6カ月前から(Gシリーズは米国リージョンで)存在した。FPGAやGPUといった分野でも追従ではなく先行している」(Souza氏)と強気の姿勢を崩さなかった。
米Microsoft クラウド&エンタープライズグループ ゼネラルマネージャーのMark Souza氏
今後日本マイクロソフトは、11社のパートナー企業と協業し、Gシリーズの提供を推進する。インターネットイニシアティブは「IIJ GIO」を中核としたSAP S4/HANAシステムラウンドスケープ構築を、GS5インスタンスとのハイブリッドで提供する(サービス名称は「SAP HANA システムランドスケープマネジメント for Azure」)。また富士通は、各種テンプレートを活用してSAP S4/HANA環境を短期間で構築する「SAP S/4HANA on Azure短期構築ソリューション」を提供する。
「SAP HANA on Azure」対応サービス提供パートナーは11社
GシリーズとSAP S/4HANAの早期導入を表明したアビームコンサルティング 執行役員 プリシンバル 中本雅也氏は、その理由を「グローバル経営基盤の構築や、サブスクリプションや成功報酬型といったビジネスモデルの変化、自社の顧客に対する価値を高めるための知見を重ねる」ためと説明した。
アビームコンサルティング 執行役員 プリシンバル 中本雅也氏