米国Fordは欧州の子会社Ford-Werke GmbHを通じて、ヨーロッパ7か国でサプライチェーン実行管理クラウドソリューションを導入した。ソリューションを提供する米国Inforが1月11日に発表し、日本法人インフォアジャパンが1月23日に抄訳で伝えた。
Fordでは、ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、チェコ、ハンガリー、英国にクロスドッキングセンターを有する。フランスのケルンやドイツのザールルイなどの倉庫では、生産供給の一貫性を確保するため、現地のロジスティクスサービスプロバイダーが日々配送サービスを提供し、1日半の間に何百台ものトラックが出入りしているとのこと。
同社では、最終組み立て工程に部品がジャストインタイムに手配されるように、倉庫内の各ワークフローを完璧に連携させることを求めていた。部品は、生産ライン内を循環する「マーケットプレイス」と呼ばれる場所にバッファー在庫として半日以上置かれることはなく、ジャスト・イン・シーケンスで組み立てられるからだ。
今回導入されたソリューションは、サプライチェーンの実行管理に必要となる倉庫管理から輸送管理、労務管理、3PL請求処理といったシステムを統合した、SCM実行系ソフトウェア「Infor SCE」。Fordでは、欧州10か所のクロスドッキングセンターでの商品の移送プロセスを自動化することで作業員やリソースを効率化すべく、採用した。オンプレミスでなくクラウドを選択したことで、Fordのパートナー企業もセキュアかつ快適にシステムにアクセスすることができる。
Infor SCEを導入したことにより、Fordの欧州各地のクロスドッキングセンターではプロセスが完全にデジタル化されるという。配送に関するスケジュールや数量を含む予測情報は、事前出荷明細通知としてInfor SCEが受け取り、出荷元は荷卸し地点とそれぞれの時間枠についての通知を受け取れるようになる。また入庫時点ですべての納品書がスキャンされ、配送計画に従ってクロスドッキングプロセスを経由して受け入れられていく。最終組立の場所が異なる大量の部品が配送された場合には、出荷準備のためにいくつかの仮置き場所に分けられる。
また、パレットや取扱ユニットに破損があった場合には、Infor SCEの返品プロセスへデジタル報告処理される。この破損品の苦情解決には、入庫時に写真を撮影してサプライヤーへ送ることになっているが、同じくデジタルワークフローで素早く処理し、次の直送を始めることができるという。
こうして、配送センターで一貫してスキャニング処理することによって大部分は仮置きが不要となり、部品処理のスピードと精度が高まる。仮置き場所にある出荷指示待ちの部品は、スキャナーで積み荷処理が行われ、積み荷場所から電子的に取扱業者に割り当てられる。Infor SCEは、出荷指示通知を受けると、最終組立工場に入庫予定の荷物について通知する。
Infor SCEは、プロセス全体を最適化するだけでなく、サプライチェーンの可視性も高めるため、Fordではオーダー履行の状況をリアルタイムに追跡し、供給のボトルネックとなる可能性を事前に発見し、対処することが可能となる。
また、サービスプロバイダーにとっても、作業員をより効率的に配置するなどのメリットを提供するという。プロセスが標準化されているため、新規プロバイダーの従業員でもすばやくシステムに慣れることが可能だ。