日本のサイバーセキュリティ人材に女性が少ない理由
日本で女性の活躍が進まない背景には、日本の女子学生のIT分野への就職の割合の低さが挙げられます。2012年のOECDの調査によると、国際平均値と比べて、日本の女子学生は卒業後、理工系やコンピュータ系の仕事に就く割合が低いのです。
国際的平均値が5%近くなのに対し、日本と米国では3%あまりです。理工系やコンピュータ系の仕事に就く男子学生の国際平均値が18%であるのに対し、日本では15%、米国では17%です。さらに、2015年3月の日本の文部科学省の調査報告書によるとICT分野で働く日本人男子学生が9.1%なのに対し、日本人女子学生の割合はわずか6%に過ぎません。
ところが、日本で大学に行く女子学生の割合は44.9%であり、男子学生の40.0%よりも高いのです。つまり、日本では女子学生の方が技術系の仕事を選んでいないことになります。
その他にも、女性に限らず日本人に国際舞台で活躍するセキュリティ従事者が少ない理由に、現実的かつ文化的な側面が挙げられます。 前回も触れたように、サイバーセキュリティにおいては、国をまたいで協力を仰いだり、情報収集を行ったりする場面が多く、英語の使用が必須となります。
英語が母国語でない者にとって、英語で複雑かつ専門的な内容についてプロポーザルを書いたり、プレゼンテーションをしたりするのはきついことです。海外の国際的なサイバーセキュリティカンファレンスで、日本人男性や(特に)日本人女性にほとんど会わないのは、こうした理由があるからと考えられます。
さらに、日本の文化においては、意見の違いについて公衆の面前で指摘するのはあまり歓迎されていないため、セキュリティにおける議論で尻込んでしまう傾向があります。
私自身の経験から言うと、そのプレッシャーは女性に対してさらに高くなっています。しかし、海外では、異なる意見であっても、礼儀をもって発言するのであれば、むしろ議論を活発化する上での貢献として歓迎されますし、沈黙は無関心として受け止められます。