3月16日、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2017」のセッションの1つとして、ガートナーのリサーチ部門でリサーチディレクターを務める片山治利氏が登壇。「調査結果に見るアジャイル開発成功のポイント」と題して講演した。

ガートナー リサーチ部門 リサーチディレクター 片山治利氏
講演では、国内のアプリケーション開発の実態について、ガートナーが2015年に実施して2016年5月にレポートを公開したユーザー調査「ITデマンド・リサーチ」から一部のデータを引用して説明した。
まず、現在採用している開発手法について、(1)ウォータフォール型、(2)アジャイル型、(3)反復型、(4)IT部門が関与しないビジネス部門主導型、の4つについてグラフを見せた。
最も採用率が高い開発手法はウォーターフォール型で33%が採用しているが、未採用だが採用を予定している率は1.9%と低い。一方、アジャイル型は16.6%しか採用していないが、採用予定は9.9%と高く、採用予定を含めると26.5%と、およそ4分の1がアジャイル開発に関心を持っている。
1000人以上の大企業では、アジャイル開発への関心が高い。1000〜1999人の企業では48.5%がアジャイル開発に関心を持っており、2000人以上では56.8%がアジャイル開発に関心を持っている。これに対し、100人未満の企業では15.4%にとどまる。
大企業でアジャイル開発に関心が高まる理由として片山氏は、「大企業は開発プロジェクトが多く、アジャイル開発が向くものが多い。ウォーターフォールだけでは対応仕切れない」と指摘する。一方、中小企業でアジャイル開発の関心が低い理由については、「外注に任せているので関心がないのかもしれない」とした。
グローバルでの調査結果は、国内と大きく異なっている。会社内で採用している開発手法の比率では、ウォーターフォール型は45%と過半数に満たない。最も多いのはアジャイル型で37%を占める。アジャイル開発に特化したデータとしては、全体の26%の企業がアジャイル型をほとんどすべての開発に適用している。
アジャイル開発を始めたら、根気よく続けることが大事
アジャイル開発の課題について調査したところ、「開発文化の変革」「従来の手法を使用するチーム作業」「一貫したプラクティスの策定」がトップ3となった。
課題の1位である文化については、まずは始めることと、始めたあとは根気よく続けることが大切という。「アジャイル開発はトップダウンで始めるケースが多い。遅かれ早かれ、トップからやれと言われるようになる」(片山氏)。
アジャイル開発を始めると、不平不満も出てくる。例えば、結果にコミットしないことへの不満、ユーザーが要件変更を出し続けることへの不満、失敗したら誰が責任をとるのか、といった不安などがある。
アジャイルを続けるポイントは、長期で続けることだと片山氏は言う。「短期間で判断しないこと。アジャイル開発の合理性を根気よく説明し続けること。地道に取り組むことが大切」(片山氏)
課題の2位と3位、プラクティスと手法の問題は、「固定」と「可変」の概念を変えることが大切であると片山氏は説く。「固定化するものと、可変のものを、入れ替える」(片山氏)
「ウォーターフォール型は、要件を固定化して、要件を実現するために日程を変更したり増員を図ったりする。アジャイル開発は正反対で、決められた期限と人員の範囲内で、要件を柔軟に見直していく」(片山氏)
アジャイルでは、もう1つ固定化すべきことがあるという。「プロジェクトのゴールを固定する。何をやろうとしているのか、何のためにやっているのかを固定し、このゴールをメンバー間で共有する」(同氏)