「Mac」がデザイナーやスタートアップ、学生だけのものだった時代は、遠い昔の話だ。コーヒーショップで使われていたAppleのハードウェアは、オフィスや役員室に広がり始めており、Apple製デバイスの使い勝手やデザインに魅力を感じる企業人も増えている。
しかしエンタープライズ環境は、依然としてMicrosoftが支配している。では、伝統的に「Windows」が中心となっているエンタープライズ環境に、Apple製品を導入して管理することは、どのくらい難しいのだろうか?この記事では、Apple製品を企業で使用することについて、4人のITリーダーから話を聞いた。
1.Appleはエコシステムの一部になり得る可能性が高い
英国の慈善団体Scopeの最高デジタル責任者(CDO)Mark Foulsham氏は、Apple製品は十分に企業で利用できるようになっているという意見だ。ScopeはAppleと協力して、「Apple Pay」を含む同社の新たなプラットフォームやサービスが、組織でどう利用できるかを調べている。Foulsham氏は、これまでのAppleとの協力関係は非常に建設的だったと述べている。
「彼らの動きはペースが速く、こちらのフィードバックに耳を傾けてくれる」と同氏は言う。「まだ課題は多いが、ほとんどの企業では、Apple製品を自社のデジタルエコシステムの一部に組み込む方法を見つけられるはずだ」
Foulsham氏は、多くの企業のアプローチでは、依然としてMicrosoft製品が中核になるだろうが、ITリーダーはAppleが提供するハードウェアとソフトウェアが優れていることを認めるべきだと述べている。「Appleのデバイスに人気があるのには、それだけの理由がある。Apple製品は使いやすく、従業員はその使いやすさの恩恵を受けられる」と同氏は言う。
「市場のほかの主要メーカーと同じく、Appleも企業がデジタル技術を取り込むのを助けようとしている。Scopeでは『iPad』と『iPhone』を使っているほか、『FaceTime』などの重要なツールを使用している。AppleはすでにScopeのデジタルエコシステムの重要な要素になっている」(Foulsham氏)
2.統合にはかなりの準備作業が必要となる
Linklatersの最高情報責任者(CIO)Matt Peers氏は、2015年5月から同社に在籍しているが、同社では多くのスタッフのデバイスをBlackBerryからiPhoneに移行してきている。これには、同社のバックオフィスで働く従業員から最高経営責任者まで、会社からスマートフォンを支給されているスタッフ全員が含まれる。一方で同社は、「Windows 10」のデバイスも使っており、「Microsoft Office」も大規模に使用している。
Peers氏によれば、企業へのApple製品導入の難易度は、ほかのベンダー(特にMicrosoft)に対する依存度と密接に関係しているという。「もしまだ会社で大規模にMicrosoft製品を使用しているのであれば、Microsoft製品とApple製品の相性はあまりよくないことを知っておく必要がある」と同氏は言う。
Peers氏は、LinklatersのIT部門はMicrosoftとAppleの技術を強固に結びつけるために、多くの時間を費やしていると述べている。例えば同社では、電子メールに「Exchange」を使用しているが、IT部門は各デバイスや電子メールサーバの同期を保つために相当な手間をかけている。
「ほとんどの企業では、Apple製品を自社のデジタルエコシステムの一部に組み込む方法を見つけられるはずだ」
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