広告会社(ここでは総合広告代理店を想定)はその昔、「マスコミ(マス・コミュニケーション)」といわれるように、テレビや新聞に代表されるマスメディアを通じて情報を伝えるビジネスを展開してきた。
しかしそのうち「マーコム(マーケティング・コミュニケーション)」という言葉がもてはやされはじめ、店頭やイベント、販売促進などのプロモーション領域を含むマーケティング全体をカバーするようになった。
さらにその後「ICT(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジ)」(注1)の本格化に伴い、デジタル情報でのコミュニケーションとそこで生まれるデータ活用が求められるようになった。

アクセンチュア、IBMなどITコンサル企業が世界の広告会社にランクイン
ICTの広告活用の高度化によって「アドテク」という言葉が出現し、広告へのアルゴリズム(=今風でいえばAI)の産業活用は金融企業の「FinTech」とならんで早く(注2)、バズワード化するのは「HRTech(人事)」や「EdTech(教育)」よりかなり早かった。
同時に、広告業界の地図もすっかり様変わりした。AdvertisingAge誌による「AGENCY REPORT 2016」によると、世界の広告会社ランキングでは上位にアクセンチュア(6位)、IBM(9位)、デロイト(11位)など、IT部門にもおなじみの企業が名を連ねている。
「マスコミ」を扱ってきた伝統的なエージェンシーは効率化を求めてグループ化し、デジタル系IT企業の買収も活発化することで、現在5大グループ(WPP、オムニコム、ピュブリシス、インターパブリック、電通)にまとまっている。一方、そのすぐ後にIT系コンサル企業が続く形になっていてその勢いは増すばかりだ。
つまり、マーケティング産業はIT化が進み、IT産業はマーケティング化が進み、両端から「越境」と「融合」がおきているといえるだろう。
