野村證券は、機械学習要素技術と高速化技術を活用したデータ分析用の人工知能(AI)を6月に導入する。これを手掛ける富士通が発表した。
データ分析用AIは、富士通研究所が開発した機械学習要素技術と高速化技術をベースにしている。野村證券と富士通が同AIを事前検証した結果、数千万~数億件規模のレコードから、数十件程度をいつもとは違うパターンに分類でき、そのうちの数件は有識者でも気づくことができなかったパターンとして新たに発見するに成功した。
同AIは、事前の予習を行うことなく自律的に分析を行い、データを投入するだけで正常パターンと、「いつもと違う」(アノマリ)パターンに分類する。そのため、証券システムやそれ以外の各種手入力業務や社内事務処理など日々記録、保存されていくデータの品質を向上させるとができる。
データ分析用AIの学習プロセス
従来のデータの品質担保手法では、入力時の人為的なミスや、いつもと違うデータの発生傾向を把握することに限界があった。大量の業務データは人手による全件確認が難しく、通常のシステムチェックでも網羅しきれないケースがあったという。
さらに日々の「いつもと違う」パターンを高速に検知することで、新たな気づきを有識者のノウハウとして蓄積し、継続的にデータ品質および分析精度の向上を進められるというメリットもある。
また、システムテストの際のテストケース作成でも、日々発生している業務データを自律的に学習させて、新たなデータパターンをテストケースに反映することができるようになる。これまでのテストケース作成は有識者のノウハウに依存していたが、今後は必要性の高いデータパターンを網羅的に自動的に抽出でき、不要なデータパターンを省いて効率的なテスト検証を実施できる。
野村證券では、今後、適用するシステムの範囲を拡大していく予定。富士通は、同技術を他業種へ提供していくことを予定している。