経営者が間違える「デジタル破壊」の捉え方

國谷武史 (編集部)

2017-06-05 11:17

 ITやビジネスなどのメディアを中心に、「デジタル変革」や「デジタル破壊」のバズワードが連日のように登場し、こうした事象に恐れを抱く企業経営者は少なくないという。米Cisco Systems デジタルビジネスを研究する客員研究員のJoel Barbier氏とLauren Buckalew氏が6月2日、都内でデジタルがもたらす破壊や変革について講演した。

Cisco
Cisco デジタル化オフィス ディレクター兼DBT客員研究員のLauren Buckalew氏

 同社は、ビジネススクールのIMDと共同で「Global Center for Digital Business Transformation」(DBT)を運営し、世界の主要都市で経営層を対象にしたワークショップを開催している。今回の講演は東京でのワークショップに合わせて行われた。

 Buckalew氏によると、DBTが世界の経営層941人を対象に実施した調査から、各業界の上位10社のうち4社が5年以内に入れ替わり、3年程度でデジタルによる業界の破壊的な変化が起こると考えている経営層が多いと分かった。41%がデジタルによる破壊を実在する脅威として捉えているものの、何らかの対応を積極的にしている経営層は25%にとどまった。

 Buckalew氏は、デジタルがもたらす破壊を「渦」と形容する。それは、業界内部や周辺環境を巻き込みながら収束や分離をもたらし、あるいは指数的、無秩序であったりするといい、そうしたイメージが経営層に漠然とした恐れを抱かせているようだ。

 デジタル破壊をもたらす代表例としてUberを挙げたBuckalew氏は、移動手段を求める人々と移動手段を提供する人々をつなぐプラットフォームを提供したことが、Uberが支持される理由だと説く。潜在的であった需要と供給を結ぶプラットフォームが価値として認められ、価値の種類と提供先を広げるエコシステムが、デジタル破壊をもたらす新興企業の成功になっていると説明する。


デジタル破壊の「渦」ではその中心に近い業界ほど影響を受けているとし、Amazonがさまざまな業界に「破壊」をもたらしているというイメージ

 Barbier氏は、デジタルの破壊と変革では、企業が置かれた状況下で最適な判断を下す「情報に基づく意思決定」、すばやく効果的に計画を実行する「迅速な実行」、環境変化の監視や検知を行う「ハイパーアウェアネス」からなるライフサイクルへ、いかに早く取り組めるかが重要だと指摘した。

Cisco
Cisco デジタル化オフィス マネージャー兼DBT客員研究員のJoel Barbier氏

 現在、世界の大手企業がデジタルの破壊をもたらす新興企業とも手を組みながら、既存のビジネスの改善あるいは付加価値の創造を目標に、さまざまなデジタル変革への取り組みを進める。経営層は、既存ビジネスが破壊されることを恐れるよりも、いかにして改善や成長、変化をさせるかに視点を変え、そこにテクノロジを活用していくべきだという。

 Barbier氏は、デジタル破壊や変革の「デジタル」の言葉にとらわれると、この事象をテクノロジの脅威と誤って認識してしまいがちだが、正しくはビジネスの課題であり、既存ビジネスをそのままにすることのリスクであると解説している。


デジタルがもたらす破壊は、既存ビジネスをより良くするための事象と捉える経営層も多いという

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