医療法人社団KNIとNECは、人工知能(AI)を活用した「デジタルホスピタル」の実現に向けた取り組みを発表した。
取り組みの一環として両社は、医療現場の改善箇所を検討・抽出し、KNIが退院を遅らせる要因を過去の電子カルテデータから分析した。そして高い改善効果が見込まれる入院患者の不穏行動の予兆検知と退院先の予測を行った。不穏行動とは、入院患者に起こり得る急性の錯乱状態のこと。幻覚妄想、感情不安定、混乱などがある。
KNIによる実証では、患者が着用した時計型のセンサからバイタルデータ(体温、心拍など)を取得し、これらのデータからAIを活用して特徴を抽出、不穏行動につながる予兆の検知に取り組んだ。同実証には、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」を活用した。
その結果、不穏行動の予兆のある患者を71%の精度で約40分前に未然検知できた。これまでは、患者の不穏行動が起こってから対応していたが、AIで不穏行動を予兆検知することで、予兆段階での対応が見込める。これにより、患者の入院長期化の回避、対応するスタッフの業務負荷軽減が期待できる。
退院先の予測については、入院翌日の電子カルテデータから退院先を84%の精度で予測できた。入院の早期の時点から退院・転院調整を行うことで、退院待ちの解消、患者の早期社会復帰、ベッドが空くことによる新たな患者の受け入れも期待できる。