近年で定着したサイバーセキュリティの表現の1つに「脅威の高度化・巧妙化」がある。従来のサイバー攻撃は「〇〇ウイルス出現」といったように、手法そのものを1つの攻撃としてとらえることが多かった。しかし、現在では多種類のマルウェアや脆弱性の悪用、フィッシング、なりすまし、ハッキングなど、さまざまな手法を組み合わせる。攻撃者が使う手法が増え、それぞれを組み合わせて段階的に、あるいは長い時間を費やして攻撃を実行する。「脅威の高度化・巧妙化」とは、こうした攻撃の特徴の変化を表したものだ。
2016年にIntelからスピンアウトしたMcAfeeは、同年10月に米国で開催したカンファレンスで「Open Data Exchange Layer(DXL)」という取り組みを発表した。OpenDXLは、同社がIntelの傘下だった時代に開発した異なるセキュリティ製品同士が協調して動作するためのDXLをオープンソース化したものになる。
McAfee バイスプレジデント兼チーフテクニカルストラテジストのCandace Worley氏
バイスプレジデント兼チーフテクニカルストラテジストを務めるCandace Worley氏は、同社の基本的な戦略の中核にセキュリティのプラットフォーム化があると話す。これは、上述の「脅威の高度化・巧妙化」に対応するために、セキュリティベンダーの枠を越えた連携の必要性が高まり、同社がそのための基盤を整備していくという取り組みになる。
「高度なセキュリティシステムを構築、運用している企業がサイバー攻撃によって深刻な被害に見舞われるケースが増えている。原因の1つは、異なるベンダーや製品の間で脅威情報を共有する仕組みが無いためだ」
ITシステムがサイロ化あるいは異種混在化することで直面する「複雑かつ手間のかかる運用」という課題は、昔から存在する。セキュリティシステムも多分に漏れず、この課題に直面している。従来のアンチウイルスやファイアウォールといった個別の対策は、個々の攻撃手法に対応するものだった。攻撃手法が増えるに従って個別の対策も増え、セキュリティシステムは「多層防御」という異種混在の状態に至る。「多層防御」を構成する1つ1つの対策を「サイロ」とみることもできるだろう。
「被害企業の中には、実はネットワークの対策システムで攻撃を検知していたにもかかわらず、エンドポイントにその情報が伝わらなかったことで、結果的に攻撃を止められなかったケースもある」
Worley氏によれば、まずMcAfeeの異なる製品同士や協業ベンダーの製品が協調動作する仕組みとしてDXLを開発した。「DXLは双方向型のコミュニケーションのAPIといえる。当社あるいはパートナーが提供するIOC(Indicator of compromise:侵害の兆候を示す指標)などを共有し、速やかに検知や防御へとつなげる」