モダンソフトウェアファクトリーの事例
Sayed氏はモダンソフトウェアファクトリーを実践している企業として4社を紹介した。その1社が21st Century Foxのニュース事業、Fox Newsだ。Sayed氏に招かれてステージに立ったFox Newsデジタル担当シニアバイスプレジデントのJohn Fiedler氏は、「ニュース事業が変革期を迎えている」と切り出し、自社の取り組みを語った。
Fox NewsのJohn Fiedler氏「消費者のアテンション(注意)を得るために戦っている」とメディア業界の変革を説明した
背景にあるのは、モバイルが最大のアクセス手段となったこと(「ユーザーインターフェイス、ユーザー体験の見直しが必要」)、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアがニュースを得る方法として定着していること(それが与える効果は「測定中」)、動画への期待(ユーザーは「デジタル製品でTVのような体験を期待している」)だ。
そこで戦略からスタート、プランニング、デザインと勧めた。だが、ゆっくりと進めていては競合にオーディエンスを持って行かれてしまう。「かなりアグレッシブなタイムライン」の下、アジャイル開発を取り入れて進めることにした。CAをパートナーに選び、アジャイル開発プラットフォーム「Agile Centrale」、ソースコード脆弱性スキャン「CA Vercode」、APIテストの「BlazeMeter API」「Runscope」などの製品を利用した。中でもCA Vercodeについては、「開発の早期段階で脆弱性テストなどのセキュリティ対策を盛り込むことは大きな変化になった」という。
その結果、わずか4ヶ月でフラッグシップのウェブサイトをローンチした。社内開発したコンテンツ管理システムとインフラが土台にあり、今後差別化の源にしていく狙いだ。
同時に、モバイルアプリ、Amazon Fire TV、Android TV、Apple TV向けのコネクテッドデバイスアプリの作り直しにも着手した。「狂っていると思われそうだが」とFiedler氏、アジャイル手法の取り入れたが身を結んだ。これらは「数週間後にローンチする」という。
「われわれの規模の企業がこのようなプロジェクトをやろうとすると、3〜5年かかる。われわれのタイムラインは18カ月だ」ーーつまり2分の1に短縮している計算だ。
スピードと効率以外に、ビジネス上の目的としてオーディエンスの増加、滞在時間を長くすることが狙いにある。Fiedler氏の「直接の競合だけでなく、Facebookなどのソーシャルメディアに費やす時間を少しでもFox Newsに持ってくることができれば」という発言から、メディア業界もディスラプションが進行していることが伺える。
Fiedler氏によると現在フェイズ1の段階であり、フェイズ2ではセキュリティテスト、APIモニタリング、アジャイルなプロジェクト管理などに取り組みを拡大するという。
同じような変革に取り組む企業へのアドバイスとして、「プロジェクトのサイズに圧倒されるかもしれないが、大きな図ばかりを見ずに細分化して1つ1つ取り組み、イテレーションを続けることが大切」とFiedler氏は述べた。