日本マイクロソフトは1月18日、定例の人工知能(AI)に関するラウンドテーブルを都内で開催した。今回のテーマは2017年12月にMicrosoftが発表した「Everyday AI」と、国内における深層学習に対する取り組み。また、2017年5月に発表したPreferred Networksとの協業に関する進捗を明らかにした。
深層学習の有償ハンズオンを全国展開へ
MicrosoftとPreferred Networks(PFN)は2017年5月に深層学習分野において、国際的な戦略的協業を結んだことを発表している。それから約半年経った2018年1月、日本マイクロソフトは、これまでの進捗状況と今後の展開を明らかにした。
当時は深層学習に関する開発事例や最新技術動向を発信するコミュニティ「DEEP LEARNING LAB(DLL)」の設立を発表したが、これまで全国12回開催した勉強への参加数は約1700人に達し、「かなり勢いのあるコミュニティに成長している」(日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏)。
その一環として、MicrosoftとFacebookが共同開発した「ONNX(Open Neural Network Exchange)」にPFNの深層学習フレームワーク「Chainer」が参加することを発表した。ONNXはCNTK(Microsoft Cognitive Toolkit)やFacebook Caffe2など、各深層学習フレームワーク間で相互運用性を高めるツールであり、「学習と推論を別のフレームワークで実行できる。マルチノード(で構成した仮想マシン)で学習、軽いフレームワークで推論を実行することも可能だ」(榊原氏)。ONNXが充実することで深層学習に携わる技術者は利便性が高まり、部門レベルでは安価な仮想マシンを併用できるため、コストダウンにつながる可能性も高い。
日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏
前述したDLLは、いくつかの深層学習事例も発表した。アイシン・エィ・ダブリュはカーナビゲーションシステムの描画異常検知に深層学習を使用している。例えば不要な文字は2万8800画像分の1、不用なルートが多数表示されるケースは2万1600画像分の1というタイミングで現れるため、人間の目視検査は非常に難しかった。
同社はPFNの分散深層学習パッケージであるChainerMNをInfiniBand搭載のAzure GPUクラスタを活用することで、効率的に学習を実施している。マネックス証券では、創業以来蓄積してきた文章データを学習素材とした深層学習を実施し、Microsoft Azure上で文章構成ツールを開発。キャンペーン情報など社内外に発信する文章の誤字脱字をチェックし、表記ゆれなどを可視化する。
このように広まりつつある深層学習だが、DLLは参加費20万円/3日間のハンズオン(体験学習)イベントを実施してきた。日本マイクロソフトの説明によれば、過去10回で150人が受講し、100%の満足度を得たという。このハンズオンを踏まえてDLLは、経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座認定制度(Reスキル講座)」の認定を取得し、「DEEP LEANING LAB "ACADEMY"」として、パートナー経由で全国展開することを明らかにした。受講者は受講費用の7割に対して補助を受けられる。深層学習を開発の現場に用いる際に必要なデータ収集や加工、ニューラルネットワークの展開や業務への組み込みなどを含むトレーニング内容の追加を予定している。