中堅企業のPCライフサイクル管理を支援
デルが打ち出す中堅企業向け施策が「ゆりかごから墓場まで」である。PCの検討、導入、運用、保守、廃棄・更新までの各フェーズにおける情報管理を一元化することで、IT担当者の負担を軽減し社内のPCライフサイクル管理を支援する。定期的に発生するPCの更新作業だけでなく、現場の要求に応じた逐次的な既存環境の見直しなどにも対応する。

「ゆりかごから墓場まで」施策の概要図(出典:デル)
例えば、中堅企業での利用に適した専用モデルPCを用意することで、検討段階の負担を軽減する。PCの構成内容は、同社の取引実績やアンケート、直接の情報収集などをもとに決められているという。
また、デルの工場で顧客の環境に合わせて作成されたディスクイメージをプリインストールし、設定までを完了した状態で出荷するサービス「カスタムファクトリーインテグレーション(CFI)」も提供する。資産管理レポートの発行や資産管理ラベルの貼り付けなども工場で対応する。これにより、端末の購入から配布までの時間を短縮し、端末管理の負担も解消する。
デルでは、過去の発注履歴や製品詳細、サポート履歴を把握し、「お客様カルテ」として提供する。「前任者からの引き継ぎで十分な情報共有がされないことの一つに、障害対応履歴がある。メーカーやベンダーとのやり取りを履歴として残すのは労力を要するため、情報自体が存在しないことも多い」(清水)。こうした情報を管理しておくことで、資産管理の工数を大きく削減する。
多岐にわたり不明確になりがちなIT業務を可視化し、定額でサポートするサービスもメニュー化した。一部の業務を切り出して依頼できるようになっている点が特徴だ。
外部リソースを活用したいというニーズはあったものの、「必要なものだけを利用したい」「価格が分かりにくい」といった課題や不安の声が挙がっていたという。そうした声に応える形で、イメージコピーやプリンタ設定、データ移行といった作業を切り分け、それぞれに細かく値付けしている。
PCの運用や保守で突発的に発生するヘルプデスク作業は、IT担当者の頭を悩ませる課題となっている。「ProSupport Plus」はシステムの障害を減らし、障害発生を速やかに解決するためのサービス。その中でも特徴的なのが、ハードウェアとソフトウェアが正常かどうかをプロアクティブにチェックする「SupportAssist」機能だ。
SupportAssistは、システムに問題が検出されると、トラブルシューティングの準備としてシステムの状態に関する必要な情報をデルに自動で送信する仕組みとなっている。その後、問題解決に向けた情報交換として同社から顧客に連絡が入り、コストのかかる問題の発生を事前に防止する。問題解決にかかる時間を最大91%、サポートプロセスにおける手順を最大72%削減することが可能だとしている。
デルの調査によると、中堅企業の53%が海外展開に向けた取り組みを検討しており、その数は増加の傾向にある。突然、海外展開を決断したり、長期出張から駐在したりするケースも少なくないという。
「手持ちのPCで全ての業務をやりくりしている海外駐在員にとって、故障や不具合は死活問題となる」(清水氏)とし、海外展開による保守リスクを指摘する。その支援策として、デルは167カ国・55言語をカバーするグローバルネットワークを生かし、24時間の監視体制・電話サポート・保守パーツの提供・オンサイト保守を実施している。海外出張時に故障が発生した場合や海外での機器移転が必要になった場合でも現地で同水準のサポートを受けられる。
PCライフサイクルの最後となる廃棄・更新の段階では、買い取りやリサイクルに出す機器の回収サービスを提供する。記憶メディアに記録されたデータは安全に消去されるため、データ漏えいに関する懸念を払拭(ふっしょく)したり、廃棄にかかる負担を軽減したりできる。
デルはまた、社会貢献(CSR)活動の一環として、中堅企業の従業員と家族を対象とした「親子プログラミング教室」「親子パソコン組み立て教室」「こどもMBA教室」を開催。科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)から成る親子参加型のSTEM教育プログラムを実施している。
「“ひとり情シス”は慢性的なIT人材不足を象徴するような言葉だ。しかし、大きな予算や強力な権限を持っているケースもあり、新しいことに先進的に取り組める環境にあるとも考えられる」(清水氏)とし、今後も「ひとり情シス」をはじめ、中堅企業のビジネスをサポートするための支援策を拡充していく計画だ。