インターネット上に文書などを保存・共有するクラウドサービスを提供する米Dropboxが、従来の個人向けに加えて法人向けビジネスにも注力している。「非常に好調に推移している」という日本法人のDropbox Japan代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏に、Dropboxの目指す姿を聞いた。
個人向け市場で鍛えられてきた「使いやすさ」に自信
「大量のデータが日々生み出される中で、それらをクラウド上のストレージに保存し、チームのメンバー間で共有して利用しようという動きが、もはや特別ではなく当たり前のように広がってきている」――。
日本法人のDropbox Japan代表取締役社長を務める五十嵐光喜氏
五十嵐氏にクラウド上でのファイル保存・共有サービスの利用状況を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。同氏が日本法人の社長を務めるDropboxは、この分野で個人および法人向けにビジネスを展開している大手クラウドストレージサービスベンダーである。
巨大なファイルを手軽に高速で共有できる使いやすさが好評を得てサービス利用が広がり、2007年の創業以来10年で、世界での登録ユーザー数は5億人を超えた。さらに、ここ数年は法人向けビジネスにも注力しており、主力サービス「Dropbox Business」は20万社以上が利用し、Fortune500の過半数が導入しているという。非上場会社なので業績内容は公表していないが、SaaSベンダーとして見た場合、最速で年間売上高10億ドルを達成したとしている。
Dropboxサービスがもたらすユーザーメリットは、コスト削減、コラボレーション、セキュリティといった観点から、図1に示した内容が挙げられる。五十嵐氏は、「クラウドストレージサービスというと、単なるデータの保管場所のようなイメージがあるが、コラボレーションを実現する機能によってユーザー同士が協働してさまざまな作業を行えることから、人が効率よく快適に働ける環境を提供しようというのがDropboxサービスのモットーだ」と強調した。
図1 Dropboxサービスがもたらすユーザーメリット(出典:Dropbox Japanの資料)
とはいえ、同様のクラウドサービスは同じ専業に加え、MicrosoftやGoogleなども提供しており、競争は一段と激しくなってきている。その中でDropboxの強みは先述したように「使いやすさ」にあるが、今後もそのユーザービリティでリードし続けることができるのか。これに対し、五十嵐氏は次のように答えた。
「使いやすさという点で私たちが確固たる自信を持っているのは、これまで個人向け市場で鍛えられてきたという自負があるからだ。使いやすさに難点があった場合、法人のお客様であれば指摘をいただけるだろうが、個人のお客様は何も言わずに立ち去ってしまう。その厳しさの中でDropboxサービスは多くのお客様に使われ続けてきた。個人向け市場で鍛えられてきた使いやすさが、法人向け市場でも大きなアドバンテージになると確信している」(五十嵐氏)
さらに、同氏は「IT市場は今、コンシューマライゼーションの流れがハードウェアからソフトウェア、そしてクラウドサービスにも来ている。その流れの中で、既に個人向けサービスで確固たる実績を上げているDropboxは非常に面白いポジションにいる」とも。すなわち、Dropboxは時代の流れに乗っているというわけだ。「非常に面白いポジション」との表現が何とも印象的だった。