コマースのSAP Hybrisがクラウドを強化するにあたって、カスタマーサクセスサービスの構築を進めている。率いるのは、SAP Hybrisでカスタマーサクセス&サービス担当シニアバイスプレジデントのKatrin Guenter氏、Hybrisの1人目の社員としても知られる。Guenter氏にカスタマーサクセスを中心に話を聞いた。
Gunter氏は1999年、Hybrisの共同創業者たちがミュンヘンで活動を始めた頃に入社した。当時Gunter氏はミュンヘンの大学生で、コンピュータサイエンスを勉強していた。論文を書いているとき、大学で求人の張り紙をみて応募、Carsten Thoma氏(元SAP Hybris担当プレジデント)の話を聞き、「クールなビジョンがあると思った」と入社のきっかけを振り返る。
Katrin Guenter氏
入社後は、スタートアップの常で、製品開発、顧客プロジェクト、プロジェクトマネジメント、プリセールス、カナダオフィスの立ち上げなど実にさまざまなことをやった。その間、SAPの買収というビックイベントも起こる。「苦しい状況を経験していた。SAP傘下に入ることでHybrisは生き残ることができた」と振り返る。「SAPがHybrisをエンドツーエンドのLOBとして維持してくれたので、ビジネスを継続できた」とGunter氏。SAP顧客に一貫した顧客体験を提供するための開発、SAPの既存の技術や人の活用を通じたビジネス、と2つの面で加速できたという。
そのGunter氏が現在取り組んでいるのが、カスタマーサクセスサービスだ。カスタマーサクセスはSalesforce.comなどクラウドベンダーの多くが提供するサービスで、クラウドの課金モデルであるサブスクリプションの継続的な更新を主な目的に、稼働に入ってからも顧客の成功をサポートしていくというものだ。オンプレミスとクラウドを持つSAP Hybrisは、既に同じような機能を提供していたが、2016年にサービスの下にカスタマーサクセスを置き、正式に組織化した。
「顧客がSAP Hybrisのソリューションを購入すると決定した段階から、ソリューションの受け入れと利用など顧客のライフサイクル全体を支援する」とGunter氏。顧客の成功を中心とした全体的視点を持ちながら、専門的なサービスでは深く関わる。それに当たって、顧客が容易にSAP Hybris側とやりとりできるようにした。窓口となる担当者を1人置き、専門性や顧客の状態により他の部署と連携したり、SI事業者など外部とも協力する。
顧客が抱える課題は「少しでも早くライブ環境にしたい、バリューを得たいと思っている」とGunter氏。カスタマーサクセスチームは、使用データを分析することで顧客がどのようにSAP Hybrisを使っているのか、理解しているかなども、効率よく把握し、支援ができるという。
「共通しているのは、どうやってイノベーションをするか。マイクロサービス、機械学習などを活用してどんなサービスが可能で、バリューが生まれるかを考えているし、マーケティングとセールスの統合を進める顧客もいる」(Gunter氏)。
現在「カスタマーサクセス」としては約80人がおり、これに加えてデジタルエンゲージを行うサポートスタッフも備える。もちろん規模を拡大中だ。日本でもすでに存在しているが、今後人員の増員をはじめ強化していく。