Wi-Fiや小電力無線のセキュリティを評価--PwCが新サービス

國谷武史 (編集部)

2018-02-06 06:00

 PwC サイバーサービスは2月5日、工場などで利用されるWi-Fiや特定小電力無線などのセキュリティリスクを調査、検証する「ワイヤレス通信アセスメントサービス」の提供を開始した。2018年中に十数社の利用を見込む。

 新サービスは、主に産業制御系システムと呼ばれる工場やインフラ関連設備で利用されるワイヤレスネットワーク環境でのセキュリティリスクを対象にしている。


ITシステムと制御システムのネットワーク接続の拡大でセキュリティリスクが高まっているという

 記者会見した最高執行責任者の星澤裕二氏は、従来の産業制御系システムでは独自のハードウェアやソフトウェア、ネットワークによる環境で運用され、セキュリティのリスクが低いと見なされてきたと指摘。しかし近年は、コストの削減や用途拡大などに対応する目的で、ITの情報系システムを活用するケースが広がり、セキュリティリスクが高まりつつあると解説する。

 同社では、セキュリティの専門担当者がサイバー攻撃手法を利用して企業システムへの侵入や攻撃に対して脆弱な部分を調査、評価する「レッドチーム演習」と呼ばれるサービスを提供している。星澤氏によれば、これまでのサービス実績から情報系システム経由で産業制御系システムに侵入し得るポイントが徐々に判明しつつあるという。

 企業が把握しているよりも広範なシステム連携やインターネットへのアクセスが行われている現状があり、「例えば、オフィス端末では禁止されているUSBメモリが制御系システムでは使われているなど、セキュリティ対策の運用にギャップがある」(星澤氏)と、制御系システムに多くの潜在的なリスクが存在していると紹介した。

 工場などの施設では、一般にも広く普及しているWi-Fiに加え、RFIDなどの近接無線によるトレーサビリティ管理や特定周波数帯を利用した監視映像の伝送など、さまざまなワイヤレス通信が行われているという。

 サイバーセキュリティ研究所長の神薗雅紀氏によると、実際に発生したある事件では、企業を退職した元従業員が事前にPSK(事前共有認証鍵)方式の社内Wi-Fiのアクセスポイントからパスフレーズを取得し、退職後にこれを使用して社内Wi-Fi経由でサーバに不正アクセスを行った。サーバから機密情報を窃取し、この情報を公開すると企業を脅迫した。


リプレイ攻撃のイメージ

 また神薗氏は、ワイヤレス通信では「リプレイ(もしくはリレー)」攻撃と呼ばれる手法を使われることで、システム上で異常な動作を引き起こされたり、正規の操作になりすました不正なアクセスなどが行われたりする被害もあると解説する。

 実際に海外では、電波時計の時刻情報をNTP(Network Time Protocol)サーバ経由で配信してシステム間の時刻同期を行っている環境において、「1969年12月31日」のある時間という情報を配信したところ、システムで異常な時刻が設定されたり、運用停止の障害が発生したりする事態に見舞われたという。国内で発生した事件では、無線で自動車の鍵を操作するスマートキーの信号を攻撃者がまず傍受し、車の所有者が離れた隙に、攻撃者が信号を増幅・再送信して開錠し、車両を盗み出した。

 神薗氏は、こうしたワイヤレス通信に「傍受」「侵入」「妨害」「乗っ取り」「偽装」「リプレイ攻撃」――の6種類のリスクがあると解説。新サービスではこれらの観点に照らして、実際の状況を調査、評価していく。先に調査した事案では、企業がワイヤレス通信を行う機器を特定していなかったケースや、取引先などの関係企業が勝手に無線通信設備を設置していたケースがあったという。


ワイヤレス通信にまつわる6大セキュリティリスク

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