「クラウドコンピューティング」という言葉がIT市場に出現して10年以上が経とうとしている。この間における企業のクラウド採用は、メールやスケジューラーなどのグループウェアを皮切りに、営業支援(SFA)や顧客関係管理(CRM)、人事、財務経理といった業務アプリケーションのSaaSで広がりを見せてきた。
一方、インフラ基盤やアプリケーション運用といったレイヤでは、オンプレミスなどにおける仮想化集約を中核としたプライベートクラウドとしてのIaaS、PaaSの構築や導入展開が中心だったと言える。あくまでオンプレミスの延長線上にあり、これらを共有リソースのもとで提供されるパブリッククラウドで利用するケースは、新規システムが中心であった。
ただしここ数年で、パブリッククラウドをメインのシステム環境として採用する企業が増えてきた。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureといったハイパースケールクラウドプロバイダーが高度な規制を要求する政府、金融、医療などへの対応を進めてきたことで、基幹業務システムにおいてパブリッククラウドを避ける理由が見当たらなくなってきたことが背景にある。これに、「デジタル変革」と称されるビジネスへのテクノロジ導入・活用がパブリッククラウドの本格採用に拍車をかけようとしている状況だ。
長らくクラウドの本命とされてきたパブリッククラウドが、いよいよ主役に踊り出る現状について解説した記事をまとめた。