本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、レノボ・ジャパンの留目真伸 代表取締役社長と、デルの清水博 執行役員の発言を紹介する。
「働き方改革が“働かせ方改革”になっていないか」
(レノボ・ジャパン 留目真伸 代表取締役社長)
レノボ・ジャパンの留目真伸 代表取締役社長
レノボ・ジャパンが先頃、「“攻め”の働き方改革を実現するコンピューティングパワー」と銘打ち、法人向けのPCやオンライン会議システムの新製品を発表した。留目氏の冒頭の発言はその発表会見で、働き方改革の進め方について疑問を投げ掛けたものである。
新製品として発表されたPC「ThinkPadシリーズ」14モデルやオンライン会議システム「ThinkSmart Hub 500」の内容についてはそれぞれの発表資料をご覧いただくとして、ここでは留目氏の働き方改革についての発言に注目したい。
留目氏はまず、「ビジネスの在り方の変容に伴って“働き方”にも変化が必要」とし、そのためには図のように企業も未来型へ移行していかなければならないと説いた。図の中でも同氏が特に力を入れて語ったのが、「系列に閉じたバリューチェーン」(クローズドイノベーション)から「共創による価値創造」(オープンイノベーション)への移行だ。
レノボ・ジャパンが説く「働き方改革」による企業の変化
「働き方改革はワークスタイルやワークライフバランスの改善といった話だけでなく、企業にとって価値創造の仕方が変わってきている動きが背景にある。例えば、企業はこれから製品を提供するだけでなく、お客さまの課題を解決する手立ても求められるようになる。すなわち、モノからコトへとニーズが変わってきている。そうした動きに対応していくためには、オープンな企業になっていく必要がある。このことこそが、働き方改革の本質だと、私どもでは考えている」
ただ、それを踏まえた上で、留目氏がこれもまた力を入れて呼び掛けたのが、冒頭の発言である。続けて、「働かせ方改革」にならないように次の3点が重要だと説いた。
1つ目は「単位時間当たりのアウトプットをいかに増やすか。一人ひとりの生産性向上が主要命題になる」、2つ目は「テレワークの普及に伴い、時間や場所に縛られずに働けるようになる」、3つ目は「プロジェクト型、共創型の働き方へと変化し、企業の内と外の壁をなくしていく」である。
「働かせ方改革」への懸念については、筆者も2017年3月28日掲載の「一言もの申す」連載「社員の成長実感に向けた“働き方改革”を推進せよ」で説いたが、留目氏の力説を聞いて同じ危機感を抱いておられることに嬉しく思った。同氏のようなキーパーソンが訴えることで、企業の間で広くチェック機能が働く方向へ動くのを期待したい。