「経験したことと経験していないことの違いは無限大だ。テクノロジを経験していないのにIoTを語るのは危険だ。CIO(最高情報責任者)は全員、CTO(最高技術責任者)になるべきだ」―。
3月15日、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2018」のゲスト基調講演に、hapi-robo stの代表取締役社長でハウステンボスの取締役CTOである富田直美氏が登壇。「AI、ロボット、IoTを社会に生かす。〜人がより幸せになるような未来を創る会社の使命とは?〜 」と題して講演した。
富田氏は冒頭、自身の生い立ちを例に、自分で体験することや、モノをゼロから作り出すことの大切さを説いた。幼少時にもらった父からのプレゼントは、レゴではなく鉄のプレートとビス。これを使って、近所のお兄さんが目の前でモノを作り上げた。こうした体験を積み上げてきた。
講演の最中、富田氏はずっと“セグウェイ”に乗っていた。富田氏が普段セグウェイに乗っている理由は、「見た時に乗りたいと思ったから」で、「好奇心と欲望を満たす人生」を送っているからだ。
富田氏が最初に買ったセグウェイは、4年ほど前に通販サイトのAmazonで買った中国Airwheel製品。米国のSegway(セグウェイ)が開発したオリジナルのセグウェイは100万円ほどの価格が付いており、高くて買えなかった。
講演で富田氏が乗っていたモデルは、3年前にビックカメラで10万5000円(税込み)で買った、中国XiaomiグループのNinebot製品。Ninebotは2015年、オリジナルのセグウェイを開発していた米国のSegwayを買収している。
「中国製で大丈夫かと聞かれるが、大丈夫じゃないのは日本だ」と富田氏。例えば、自動車を作る産業用のアームロボットは日本とドイツに一日の長があるが、世界一のアームロボット会社のドイツKUKAは、現在では中国の美的集団(Midea Group)の子会社だと指摘した。
hapi-robo st代表取締役社長でハウステンボス取締役CTOの富田直美氏
世界基準を日本に持ち込め
「セグウエイほど素晴らしい乗り物はない」と富田氏は褒める。「はっきり言って、こんなに人間の能力をそのまま使える乗り物はない」(富田氏)からだ。セグウェイには、アクセルもブレーキも付いていない。
セグウェイは優れているが、日本では公道でのセグウェイの使用が禁じられている。これについて冨田氏は、「日本基準でものを考えるな」と警笛を鳴らす。「日本は、老人に対して、セグウエイを許可せずに、危険な自転車に乗ることを許可している。これでいいのだろうか」(富田氏)。
ドローンを自由に飛ばすことができない点についても、「20万円以内で買えるドローンで、何でもできる。しかし、制約があると何もできない」と指摘する。講演では、富田氏がドローンで撮影した花火の映像を見せた。ドローンが水平を保つことによって、キレイな映像が撮れている。
ドローンの正しい使い方の1つとして富田氏は、大量のドローンを群制御することによる光のショー「Intel Shooting Star」のビデオも見せた。「ドローンの群制御によるショーなら、花火など既存のテクノロジと比べて環境にも人にも優しい」という。一方で、ドローンを配達に使うと事故のリスクがあって危険と指摘する。
セグウェイやドローンの例に見られるように、「(法律や常識などがもとで)日本は鎖国状態になっている」と富田氏は指摘する。冨田氏はもはや、“日本VS世界”という視点ではなく、世界しか見ていない。「世界基準を日本に持ち込もう」と力説する。