米国では2016年末に、オバマ政権の経済分野や科学分野アドバイザーたちが「Artificial Intelligence, Automation, and the Economy」と題したレポートをまとめている。
このレポートには、2010年頃から始まり、今も加速し続けている、オートメーションとAI技術の導入ペースに関する最新データと今後の予想が掲載されている。
レポートの全文を読む価値は十分にあるが、主な調査結果は、おそらく読者にもなじみのあるものだろう。執筆したアナリストらは、すべての労働者がロボットに取って代わられる日は当面来ず、それが起こる時期についても、よくて推測にすぎないと述べている。しかし、オートメーション技術が浸透することでグローバル経済における移行は進行しており、それは受け入れざるを得ず、止めることは不可能だ。
プレトリア大学の政治経済学教授Lorenzo Fioramonti氏は、「従来との大きな違いは、今日のオートメーション技術は高度に知的であり、学習する能力を備えていることだ」と述べ、現在のオートメーションは過去の技術の破壊的変革と本質的に違わないとする、よくある主張に反論している。
このオバマ政権のレポートでは、世界の政治指導者は、今後生じる劇的な変化の影響について十分な情報を持っておらず、準備が整っていないと指摘している。
オートメーション企業であるABBが新たに発表した、世界各国の自動化準備指数とホワイトペーパーの内容は、この恐ろしい調査結果が正しいことを裏付けている。(ロボットを作っている企業がオートメーションに関して警鐘を鳴らしていることは奇妙に思えるかもしれないが、実は業界のイメージを和らげようとするオートメーション企業間の競争が存在するようだ)。
自動化準備指数は、インテリジェントなオートメーション(既存の業務に急速に導入される可能性がある、機械学習やAIを用いたオートメーションを指す曖昧なフレーズ)の広がりに対する各国の準備状況をランク付けする指標だ。
同指数と同時に発表されたホワイトペーパーによれば、「イノベーション、教育、労働市場の分野における政策や戦略の存在を評価した結果、AIやロボットによるオートメーションの課題を具体的に解決する政策は、ほとんどとられていないことが明らかになった」という。