本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、IIJの勝栄二郎 代表取締役社長と、米FireEyeのGrady Summers エグゼクティブバイスプレジデント兼CTOの発言を紹介する。
「マルチクラウドニーズがここにきて高まってきている」
(IIJ 勝栄二郎 代表取締役社長)
IIJの勝栄二郎 代表取締役社長
インターネットイニシアティブ(IIJ)が先頃、2017年度(2018年3月期)の決算を発表した。勝氏の冒頭の発言は、その発表会見の質疑応答で、クラウド事業の最近の動向について聞いた筆者の質問に答えたものである。
IIJの2017年度の連結業績は、売上高が前年度比11.6%増の1760億5000万円、営業利益が同31.7%増と好調に推移した。中でも売上高の82.9%を占めるストックビジネスが同14.0%増と積み上がり、強固な財務基盤を築いている。
同社のストックビジネスは、創業以来のインターネット接続サービスが中心だが、ここ数年はクラウド事業などにも注力。同事業の2017年度の売上高は179億1000万円で、前年度比14.4%増を記録。現状では同年度の全売上高に占める割合は1割を超えたところだが、同社では成長事業の1つと位置付けている。
同社のクラウド事業の主力サービスは、2015年11月に提供開始した「IIJ GIOインフラストラクチャーP2(IIJ GIO P2)」。これは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのメリットを融合させた形の「ホステッドプライベートクラウドサービス」である。
同社のクラウド事業に関する実績を表す鍵になる数字や動きについては、下の図に集約されている。ちなみに、右上の売上内訳の円グラフに記されている「プライベート」はIIJ GIO P2のことである。また、右側の中央には顧客数の推移や顧客の月額規模別の社数まで記されている。自社のクラウド事業の状況について、ここまで公開しているのは同社だけだろう。
図:IIJのクラウド事業の状況
図の左下には2017年度の動向として、「大口を含む案件継続計上でほぼ計画通りの実績」として、具体例が幾つか示されているが、会見の質疑応答で改めて目立った動きを聞いたところ、勝氏が語ったのが冒頭のコメントである。さらに次のようにも説明した。
「GIO P2を利用していただいているお客さまは、アマゾンやマイクロソフトのパブリッククラウドもさまざまな用途で利用されようとしている。逆に言うと、GIO P2はそうした外部サービスとも連携して使えるので、まさにマルチクラウドニーズに打ってつけだ。とはいえ、このニーズが本格的に具現化してくるのはこれからなので、しっかりと対応していきたい」
2018年度のクラウド事業の売上高は、前年度比11.7%増の200億円を計画。その達成に向けて、改めてマルチクラウドニーズへの対応がキーになりそうだ。