海外コメンタリー

今知っておきたい職場におけるAI(前編)--どう活用し、何を変えうるか

Nick Heath (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2018-08-27 06:30

 人工知能(AI)は良きにつけ、悪しきにつけ、職場に大きな変化をもたらすようになる。その変化はどのようなかたちで表れるのだろうか。

 AIによってもたらされる職場の変化についてはさまざまなことが語られてきているが、これまでのところその影響はわずかであり、ゆっくりと現れてきているだけだ。とは言うものの、来たるべき変化の規模は明らかになりつつある。

 特定作業の遂行方法をプログラミングされなくても学べるという能力をコンピュータが獲得することで、多岐にわたる複雑な役割を自動化できる時代がついにやって来ようとしている。

 こうした新たな自動化の波はまだ広範囲に及んではいない。とはいえ、この新しい力がいかに作業の性質を根底から変えようとしているのかは既に見え始めている。例を挙げると、レジなし店舗「Amazon Go」では、買い物客は欲しい商品を手に取り、そのまま店を出ることができる。また、Amazonの倉庫内では大量の「Kiva」ロボットが商品を運搬するために行き来している。さらに、世界中に設置されているThyssenKrupp製のエレベータではAIとIoTセンサの組み合わせによる予防保全が実施されている。

 職場でのAI利用はまだ一般的になっていないかもしれないが、さまざまなかたちであらゆる業界に影響を与えるようになるはずだ。

企業におけるAI利用の現状と、最も大きな影響を受けるところ

 AIの利用はまだ始まったばかりであるとはいえ、パイロットプロジェクトは数多く実施されており、小売りや製造、販売、顧客サービス、物流管理、オフィス管理などの幅広い業界の職場でAI支援型のテクノロジが試されるようになっている。

ボットとバーチャルアシスタント

 機械学習(ML)によって訓練されたシステムが、言語理解とまではいかなくとも、人間のスピーチを聞き取る能力を獲得するようになるにつれ、自動化されたチャットボットの可能性も現実味を帯びてきている。

 このようなシステムはたいていの場合はまだ、簡単な質疑応答のシナリオに限定されているとはいえ、小売分野の企業は顧客からの問い合わせに応答させたり、質問に答える従業員を支援させるというかたちでボットを試用している。

 その一例に、英国の家電小売企業であるDixons Carphoneが「Microsoft Bot Framework」と「Microsoft Cognitive Services」を用いて開発した対話ボットがある。「Cami」という名前のこのボットは、同社の「Currys」ブランドのウェブサイトや、「Facebook Messenger」経由による質問に答えるために利用されており、従業員や顧客が商品を見つけたり、在庫を確認したりする際の手助けをしている。

 同様に、英国の通信事業者であるThree UKはコンサルタント企業Red Ant Consultingの協力を得て、「IBM Watson」ベースの「マルチチャネル対応のセールスプロバイダー」を開発した。これは、膨大な数にのぼるThreeのドキュメントや製品詳細、顧客によるレビュー、ソーシャルメディアの投稿に基づき、口頭での、あるいはテキストベースでの自然言語による質問に回答することを目的としている。またCoca-Colaは、顧客からの簡単な問い合わせに対応する、Nuance Communicationsの「Nina」をベースにした顧客サービス用チャットボットの完成度に満足しているという。

 しかし、こうした製品の多くは依然として初期段階にあり、顧客とのやり取りは比較的限定された内容にとどまっている。

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