これまで「OpenStack」のバージョンをアップグレードするのは難しい作業だったし、ベアメタル上での展開も苦労が多かった。しかし、米国時間8月30日にリリースされたOpenStack 18「Rocky」では、このどちらの問題も対処が容易になる。
これまでも、オープンソースのOpenStackで構築されたクラウドでは、ベアメタル、仮想マシン(VM)、GPU、コンテナなどさまざまなハードウェアアーキテクチャが利用できたが、ベアメタルで利用するにはコツが必要だった。今回のバージョンでは、OpenStackのベアメタル用プロビジョニングモジュールである「OpenStack Ironic」に、ベアメタルで構成されたインフラの高度なマネジメント機能やオートメーション機能が導入された。また、コンピュートインスタンスをプロビジョニングするサービスである「Nova」も、仮想マシンとベアメタルサーバの両方に対応した。これは、マルチテナントに対応したことを意味しており、ユーザーはVMと同じように物理インフラを管理できるようになる。
Red Hatの主席ソフトウェアエンジニアであり、OpenStack Ironicのプロジェクトチーム責任者であるJulia Kreger氏は、「OpenStack Ironicはベアメタルクラウドサービスを提供しており、これまで仮想マシンでしか享受できなかったオートメーションと高速なプロビジョニングの恩恵を、物理サーバでも実現した。これは強力な基盤であり、VMとコンテナを1つのインフラプラットフォームで併用することが可能になる。これは多くのOpenStack利用者が待ち望んでいたことだ」と述べている。
OpenStackのアップグレードは簡単ではない。しかし、OpenStack Rockyで正式に導入された「Fast Forward Upgrade」(FFU)機能を利用すれば、新バージョンに移行するのが楽になる。FFUを利用すれば、リリース「N」を使っている「OpenStack on OpenStack」(TripleO)のユーザーが、中間のリリースを素早く通過して、いきなりリリース「N+3」にアップグレードできる(現時点のFFUは、「Newton」から「Queen」にアップグレードする)。いきなりRockyにすることはできないものの、従来よりはずっと早く、それに近いバージョンまでOpenStackをアップグレードすることができる。
OpenStack Foundationはその他の主要な新機能について、プレスリリースの中で以下のように説明している。
- 「Cyborg」は、GPU、FPGA、DPDK、SSDなどのアクセレレータのライフサイクル管理機能を提供しているが、RockyではFPGA用の新しいREST APIが導入された。これによって、FPGAデバイスにロードされた機能を動的に変更することが可能になる。
- Rockyでは「Function as a Service」(FaaS)プロジェクトである「Qinling」(「チンリン」と発音する)が導入された。これを利用することで、OpenStackクラウド上でサーバレスコンピューティングを実現できる。
- 仮想マシンの高可用性を実現する「Masakari」が導入された。
- 負荷分散プロジェクト「Octavia」で、UDPがサポートされた。これによって、エッジコンピューティングやIoTでOpenStackを利用する際に負荷分散を行うことができる。
- Magnumが認定Kubernetesインストーラーになったことで、OpenStack上にKubernetesを展開するのが容易になった。
OpenStack Rockyはこのページからダウンロードできる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。