本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長と、日本OpenStackユーザー会の水野伸太郎 会長の発言を紹介する。
「Surface GoによってこれまでのSurfaceのユーザー層を拡大したい」
(日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長)
日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長
日本マイクロソフトが先頃、自社ブランドのデバイス「Microsoft Surface」の新製品として、これまでのSurfaceと比べて「最も軽くて薄く、さまざまなシーンで活用できる」とした「Surface Go」を8月28日に発売すると発表した。平野氏の冒頭の発言は、その発表会見で、新製品への期待を述べたものである。
平野氏は会見で、「当社が注力しているのは、インテリジェントテクノロジによるデジタルトランスフォーメーションの推進によって、ワークスタイルやライフスタイル、インダストリの各分野におけるイノベーションを支援していくことだ。Surface Goはこれら全ての分野にまたがって利用される。当社にとって非常に重要な位置付けとなる製品だ」と力を込めた。
会見ではSurface Goのアピールポイントとして、「これまでデジタル技術のメリットを享受しにくかった工場や建設現場、医療、接客などのサービス業など、さまざまな業種の最前線で、スマートフォンやデジタルカメラ、タブレット端末など複数のデバイスで行っていた業務や情報管理・共有を1台のSurface Goでこなせるようになる」と、さまざまな現場で役立つというイメージを前面に押し出しているのが印象的だった。それがつまりは冒頭の発言につながっている。
平野氏はまた、「PCライクなデバイスはこれまで、ともすれば持ち運びに難点があるケースが少なくなかったが、Surface Goならば快適に持ち運びできる。さらにクラウドのパワーと組み合わせれば、一層効率的でクリエイティブな使い方が可能になる」とも強調した。
MicrosoftがSurfaceを商品化して5年。新モデルが発表されるたびに筆者も会見に出てきたが、当初はMicrosoftが「PCライクなデバイス」を手掛けることに驚き、時代の変化を感じた。そして今回、会見で説明を聞いていて思ったのは、新たなデジタル時代のプラットフォーマーを目指すMicrosoftにとって、Surfaceを浸透させるのは非常に重要な戦略であるということだ。
その鍵となるのが、Microsoftならではの「インテリジェントテクノロジ」である。このインテリジェントテクノロジは、「インテリジェントクラウド」と「インテリジェントエッジ」で構成される。そのベースとなるのが、クラウドでは「Microsoft Azure」および「Office 365」、エッジではOSの「Windows」とそれを搭載したデバイスのSurfaceである。つまり、インテリジェントエッジを推進する同社として、Surfaceは不可欠なピースなのである。
Surface Goの品定めもさることながら、筆者としてはMicrosoftのプラットフォーマーとしての思惑が気になった会見だった。
Surface Goを手にした米MicrosoftのMatt Barlowコーポレートバイスプレジデント(左)と平野氏