正規の「Windows」ユーティリティと無害なソフトウェアを悪用して、こっそりデータを盗む新しい攻撃チェーンが発見された。
Symantecによると、この新しいマルウェアキャンペーンは、「living off the land」(環境寄生型)と呼ばれる攻撃手法の典型例だという。
言い換えると、攻撃者はコンピュータのメモリ空間などで簡単なスクリプトとシェルコードを実行してファイルレス攻撃を遂行するだけでなく、標的のマシン上で利用可能なリソース(正当なツールやプロセスを含む)も利用するようになっている。
外部マルウェアの標的システムへの導入を減らし、標的のマシン上で既に利用可能なソフトウェアを利用することで、攻撃者はより長い期間にわたって検知を回避し、正体を暴かれるリスクを最小化することができる。新しい攻撃チェーンは、まさにこの手法を取り入れている。
Symantecによれば、最近発見されたこのキャンペーンは「Windows Management Instrumentation Command-line」(WMIC)ユーティリティを利用する。
WMICは、「Windows Management Interface」(WMI)を操作するためのコマンドラインツールで全てのMicrosoft Windowsマシンに搭載されている。WMIはローカルだけでなくリモートのコンピュータの管理にも利用でき、設定などのシステム情報を取得したり、プロセス管理やスクリプト実行などの操作をしたりすることができる。
攻撃者らはWMICと「eXtensible Stylesheet Language」(XSL)ファイルを組み合わせて、複数段階の感染チェーンの一部として悪用し、Windowsマシンからこっそり情報を盗み出そうとする。
攻撃チェーンは、フィッシングキャンペーンのURLリンクを介して、ショートカットファイルが届くところから始まる。ショートカットファイルには、リモートサーバから悪意あるXSLファイルをダウンロードするWMICコマンドが含まれ、被害者がこのショートカットファイルをクリックすることで、攻撃は次のステージに移行する。
そのXSLファイルには、「mshta.exe」を使って実行されるJavaScriptが含まれる。mshta.exeは、「Microsoft HTML Application Host」の実行に使用される正当なWindowsプロセスだ。
しかし、そのJavaScriptは無害ではなく、ドメインとポート番号をランダムに生成するために使用される計52のドメインのリストが含まれる。このJavaScriptの狙いは、「HTML Application」(HTA)ファイルと3つのDLLをダウンロードをダウンロードすることだ。これらは後にメインのペイロードとともに、「regsvr32.exe」によって登録される。
その後、追加のモジュールがダウンロードされ、被害者のPCが危険にさらされる。
ペイロードには、MailPassviewユーティリティを使ったメールパスワード盗取モジュールや、WebBrowser Passviewを使ったブラウザパスワード盗取モジュール、キーロガー、バックドア、ファイルブラウザなど、情報を盗み出すための複数のモジュールが含まれる。
「サイバー犯罪者が WMIを悪用するのは珍しくない。ただし、伝播の目的で使われるのが普通で、今回は悪質なファイルのダウンロードに利用されている点が注目に値する」「WMICを使うのが攻撃者にとって有利なのは、目立たずに潜伏するのが容易になるうえ、攻撃活動を支援する強力なツールも使えるからだ」(Symantec)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。