先週発表されたトヨタ自動車とソフトバンクの協業は、まさに時代の転機を感じさせるものだった。ITサービス会社にとっても、この動きから学ぶべき点がありそうだ。
合弁会社で「Autono-MaaS」事業を展開へ
「時が来た」――。両社の経営トップが口をそろえてこう言ったのが印象的だった、トヨタ自動車とソフトバンクの戦略的提携の発表。日本を代表する巨大企業同士であり、自動車とITという異業種の協業というのもあって、大きな注目を集めた。(写真1)
写真1:発表会見に臨むソフトバンクグループの孫正義代表(左)とトヨタ自動車の豊田章男代表取締役社長(写真提供:トヨタ自動車)
協業内容は、両社で合弁会社「MONET Technologies」を設立し、2018年度内に共同事業を開始するというものだ。冒頭の「時が来た」とは、「モビリティとAIの融合へ向けた時代が本格的に動き出した」というのが両トップの認識のようだ。
MONETは、トヨタが構築したコネクテッドカーの情報基盤である「モビリティサービスプラットフォーム」と、スマートフォンやセンサデバイスなどからのデータを収集・分析して新しい価値を生み出すソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携。車や人の移動などに関するさまざまなデータを活用することによって需要と供給を最適化し、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする「MaaS(Mobility as a Service)」事業を推進していく構えだ(図1)。
図1:合弁会社の事業イメージ(出典:プレス発表資料)
まずは、利用者の需要に合わせてジャストインタイムに配車が行える「地域連携型オンデマンド交通」や「企業向けシャトルサービス」などを、全国の自治体や企業向けに展開していく予定。
そして2020年代半ばまでには、移動、物流、物販など多目的に活用できるトヨタのモビリティサービス専用の電気自動車(EV)「e-Palette(イーパレット)」による「Autono-MaaS」事業を展開する。これによって、例えば、移動中に料理を作って宅配するサービスや移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどのモビリティサービスを、需要に応じてジャストインタイムに提供。将来はグローバル市場への提供も視野に入れて事業展開していくという。
両社の発表会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、この動きからITサービス会社にとって学ぶべき点について考察したい。