ネットワークに付加価値を与えるサービス
きつねうどんをご存じだろうか。知らない人はほぼいないと思うが、うどんの上に油揚げが乗っているアレである。
うどんそのものの重要性もさることながら、料理として成立させているのは紛れもなく上に載っている油揚げだろう。さて、アルテリア・ネットワークスではこの料理をビジネスイメージとして社内に浸透させている。
通信キャリアはいわゆる「土管屋」と言われる商売が根幹だ。土管にもさまざまなグレードが存在するのはこれまでに紹介してきた通りだが、その土管をどう使うかは顧客企業に依存する。顧客企業はわれわれが提供する土管…もといネットワークをどう使いたいのか。それを突き詰めて考えるとネットワークを提供するだけではダメなのではないかという思いが募ってくる。そう、味付けが重要なのだ。その目的に応じて、油揚げを載せたり、天ぷらを載せたりしなければならない。われわれはこれをネットワークに付加価値を与えるサービスと位置付けている。
安全なネットワークの提供
ネットワークサービスの味付けで最もポピュラーなものはセキュリティだろう。ネットワークを活用したITサービスにおけるセキュリティポイントは大きく次のように分類できると考える。
ネットワークのグレードとしてインターネットを活用するならば、これらを守ることの重要性はかなり高まる。いや、例え閉域網や専用線だとしても最終的に人によるサイバーリスクというものは侮ることができない。
アプライアンス提供からNFV提供へ
従来これらの付加価値用途の機能はアプライアンス(専用機器)を提供することで各セキュリティポイントに機能追加されてきた。アプライアンスの機能追加には初期費用や、メンテナンス費用などの大きなコスト負担が伴うにも関わらず、最新のサイバーリスクに対応できないなどのデメリットも発生することがあり、それを導入する企業に大きな負担を強いてきた。
しかし、昨今それらの機能の仮想化が進んできた。これはNFV(Network Functions Virtualization)と言い、従来のアプライアンスの機能をソフトウェアにより提供するものである。これにより、最新のサイバーリスクに対応した機能を使いたいときに使いたいだけ利用することが可能となってきている。
ITサービスにおけるセキュリティは、何か1つを導入すれば全てのサイバーリスクをカバーできるというものではない。それぞれのサイバーリスクに対応した機能を多層に重ねて利用するのが通例だ。アプライアンス提供でもそれは可能だったが、同じメーカー同士の機器でしか連携できないなど制限が多かったことは事実だ。NFVにおいてはそれよりも柔軟に機能連携ができるようになる。これを一般にサービスチェイニングと言う。
まとめ:味付けされたネットワークと次回予告
素うどん(ネットワークサービスだけ)でもITサービスは提供できるが、そのサービスを利用するユーザーにとっては少し物足りないかもしれない。味付けがしっかりされ、(ユーザーの)要件に合ったサービスを提供することが必要となってくる。
大きな通信キャリアはこれらをワンストップサービスとして全て自社で提供できるところもある。そうでない通信キャリアもさまざまなパートナーとアライアンスを組んで提供している。その提供の仕方も従来のアプライアンス提供の形からNFVでの提供まで、さまざまな形が存在する。現時点では、サービスを導入する側の状況に応じて適切なものを選ぶといいだろう。
ここまでネットワークサービスとそれを取り巻くサービスの基本的な構成を説明してきた。これらは今後も続いていくだろうが、ネットワークサービスもさらなる進化を遂げている。次回はそれを簡単に説明しようと思う。
- 飯田哲也(いいだてつや)
- アルテリア・ネットワークス エキスパート・エンジニア
- 1973年生まれ。PlayStatoinシリーズの開発に関わりハードウェアおよびソフトウェアの基礎技術を会得。PlayStation2の開発においてはPS1互換エミュレータのメインプログラマーを務める。その後、台湾楽天市場のプロデューサー兼プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)としてウェブサイトの構築と運用を担当。アドテクノロジのベンチャーを経て、楽天でんわおよび楽天モバイルの立ち上げに技術担当として携わる。
2016年からアルテリア・ネットワークス。レジスタからクラウドまでソフトウェアの多くのレイヤに関わった経験と、ゲーム・電子商取引(EC)・アドテクノロジ・電話・インターネット接続事業者(ISP)と多くの業界を渡り歩いた経験をもとに技術やプロダクトのリサーチ・マーケティング業務を担当。現在に至る。