ロミオとジュリエットで、ジュリエットは「名前に何の意味があるの?」と問いかける。しかし、AWSの最高経営責任者(CEO)Andy Jassy氏が「re:Invent」の基調講演で「ビルダー」という呼び名を何百回も口にした際、そこに込められた考えに苛立ちを感じたソフトウェア開発者やクラウド開発者にとっては、おそらく大きな意味があるに違いない。
「ビルダー」(builder)という言葉は通常、建設業者を意味する。Jassy氏の基調講演を聴いていると、クラウドをテーマにしたカンファレンスに来ているのではなく、建設業界の話を聞いているのではないかと錯覚しそうなほどだった。
Jassy氏は講演で、開発者ではなくビルダーという言い方を何度も使った。同氏の講演には、自由をテーマにしたBeatlesの曲「Blackbird」をバンドに生演奏させる演出まで入っていた。
そこに込められたメッセージは、AWSはビルダーにツールやサービスを選ぶ自由を提供しようとしているということだ。AWSは、セキュリティやデータレイクなどをはじめとする機能を管理する、メタサービスと言っていいサービスを数多く発表した。Jassy氏はまた、OracleとMicrosoftのデータベースを「守旧勢力」として槍玉に挙げた。
「われわれは、1つのツールが世界を支配していいとは思っていない。仕事に合った正しいツールが使われるべきだ」と同氏は述べた。
同氏はまた、次のように述べている。
ビルダーは既存の古いインフラの制約を受けてきた。これはもどかしいことだ。ビルダーのほとんどは、同じことを何度も繰り返すためにその仕事に就いたわけではないはずだ。そういった制約はやる気をなくさせる。また、企業はビルダーたちを訓練して、顧客体験のイノベーションを行わせないようにしてきた。
同社が言おうとしていたのは、AWSはビルダー(開発者の別名)のためのものであり、ビルダーは競合企業のセキュリティやデータベース、コンピュート、コンテナなどに関する売り文句に乗せられるべきではないということだ。
「確かに、他のプロバイダもコンピュートは提供しているが、AWSが提供している機能にはまったく及ばない」とJassy氏は語った。同氏はいくつものサービスの紹介したが、同氏が言いたかったのは、企業にとっては利用できるサービスの幅が重要だということだろう。
AWSは自らをツールを提供する企業だと考えており、サービスやツールはいくらあっても十分ということはない、というわけだ。同社は、サービスを果てしなく増やし続けるというアプローチで、あらゆるタイプのビルダーの要求を可能な限り満たそうとしている。
ただし、ビルダーという呼び方が開発者に受け入れられるかどうかは分からない。Jassy氏の講演のライブストリームに対するTwitchのコメントは見ていて面白かったが、「ビルダー」は「開発者」と同じではないという意見が多く見られた。
Twitterユーザーの間でも、Jassy氏につられて開発者をビルダーと呼ぶような現象は起きていない。
開発者をビルダーと呼んだ企業はAWSが初めてではないが、聴衆をウンザリさせるほどこの言葉を連発したのはAWSが初めてかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。