「シェアリングエコノミーの衝撃」連載の第8回は、この分野で重要な位置付けとなるプラットフォームビジネスなどを研究している富士通総研 経済研究所 研究主幹の浜屋敏氏に見解を聞いた。
取り引き上の「信頼」をどう担保するかが課題
--まず、シェアリングエコノミーについてどのように見ているか、お聞かせいただきたい。

富士通総研 経済研究所 研究主幹の浜屋敏氏
私が最も注目しているのは、個人間の取り引きが中心となって広がってきていることだ。発端となったAirbnbの民泊仲介やUber Technologiesのライドシェア(車の相乗り)といったサービスがグローバルで広がってきた中で、個人間でさまざまなものがシェアリングできるということに、みんなが気づいた。
それによって、これまで個人の持ち物などで活用されていなかったものが、シェアされて活用されるようになった。これはまさしく、これまでになかった経済活動といえる。
ただ、日本でシェアリングサービスが浸透していくには、大きな問題が2つあると見ている。1つは、他国に比べて「規制」のハードルが高いこと。AirbnbもUberもこの問題で苦慮している。
もう1つは、取り引き上の「信頼」をどう担保するか。特に日本人は、知らない相手を最初から信頼しようとはしない傾向がある。一方、例えば、米国人は知らない相手に対してもあいさつの際、相手の目を見て握手をし、信頼の姿勢を見せる。こうした対応の違いはおそらく、それぞれの社会の成り立ちから来るもので、善し悪しをつけるものではないだろう。
とはいえ、日本人の性格は、お互いに知らない者同士が取り引きを行うシェアリングサービスには向いていない。そこの信頼関係をどう担保するかが、日本でのシェアリングサービスの浸透、ひいてはシェアリングエコノミーの拡大に向けた大きな鍵となるのではないか。
--個人間の取り引きにおける信頼の担保という意味では、例えば、AirbnbやUberといったマッチングサービスを提供するプラットフォーマーが請け負う形になるのでは。
取り引きを成立させたいプラットフォーマーは、そうした知らない者同士の個人間の信頼関係を支援しようと、SNSなどを駆使してコミュニケーションを取りやすくしたり、利用者による評価の仕組みを作ったりしており、その当たりのきめ細かさがサービスの人気度を左右しているところもある。
ただ、何か問題が起きたとき、プラットフォーマーが最終的に責任を負うことはない。従って、利用者は基本的に自己責任であることを認識しておく必要があるのが、現在のシェアリングサービスの仕組みだ。