NECは12月12日、人工知能(AI)を活用した時系列データ分析による状態判別技術「時系列データ モデルフリー分析技術」を開発したと発表した。プラントや道路・橋梁、鉄道・自動車など、社会インフラの運用監視に適用することで、異常検知・障害診断・故障予測が可能になるとする。
プラントなどの社会インフラ設備に設置されたセンサなどから収集・蓄積されたデータを用いて、正常/異常などの現在の状態を迅速かつ高精度に判断する。最初に収集・蓄積されたデータをディープラーニングで学習することで、特徴抽出エンジンを自動生成する。監視員が経験的に行ってきたデータの特徴点をAIで発見する。また、少量データしかない早期の段階からでも、運用しながら精度を向上させることができる。
同技術による運用監視の流れ(出典:NEC)
この技術による運用監視の流れは、「学習」「蓄積」「監視」の3つの段階に分かれる。
学習段階では、時系列データを一定時間ごとの部分時系列(セグメント)として分割し、各セグメントに内在する特徴的な動きをディープラーニングで繰り返し学習する。そして時系列データをコンパクトなバイナリデータへ変換する特徴抽出エンジンを自動生成する。
蓄積段階では、特徴抽出エンジンを用いて収集蓄積されたデータを分割し、全てのセグメントをバイナリ形式に変換してデータベースに格納する。これにより、データ量が圧縮され、高速な検索が可能になる。
監視段階では、監視している時系列データを特徴抽出エンジンでバイナリデータへ変換し、これを検索キーとして特徴データベースから類似したバイナリデータを検索することで、運用対象の状態を判断する。
同技術では、対象から得られるデータをモデル化せずに、データの時間的な変化やデータ間の関係を特徴として抽出し、バイナリデータに変換。その比較で対象の状態を判断する新しい方式を採用している。バイナリデータの変換では、それぞれの特徴を抽出する2つのエンジンを内部に持ち、これらの結果を合成することによって、最終的に特徴をバイナリデータとして変換する。
また、この方式により、過去に発生したさまざまな障害時のデータの特徴と比較することで、異常検知のほかにも過去の経験に基づいた障害診断が可能となる。熟練者が経験と勘で気付くような手掛かりを、過去に発生した特徴が類似している障害情報から探ることが可能になり、万が一障害が発生しても、適切なリカバリ対応を実施することで障害復旧期間を短縮できるようになる。
さらに、障害の発生前に共通して現れるデータの特徴と比較することで、障害の発生前と現在が同じ状態になったことを検知し、故障が特定時間後に発生する可能性を事前に検知・予測できるようになる。これにより事前の部品交換や系統の切り替えなど、予防的な対応が可能となる。
NECでは2019年度中に火力発電所での実用化を目指しており、実証・検証を重ねて、他の社会インフラなどへも適用範囲を拡大していく。