大林組、NEC、KDDIの3社は、次世代移動通信システム「5G」を活用した建設機械(建機)の遠隔操作に関する実証実験で、2台の異なる建機(バックホーとクローラーダンプ)を連携させ、土砂を運搬することに成功したと発表した。また、国内で初めて対話型の音声制御システムをICT施工の現場に導入し、音声のみで5Gを搭載した建機を遠隔操作することにも成功。これにより、1人のオペレーターで2台の建機を同時に操作することが可能となり、熟練した建設従事者の不足を補い、さらなる作業効率の向上に寄与できるとしている。
実証の概要
この実証は、大阪府茨木市にて建設中の安威川ダムの施工エリアの一部を使用し、12月3~14日に行われた。各建機の前方に2Kカメラを3台、全天球カメラを1台搭載し、計8台のカメラ映像と音声情報を5Gでリアルタイムに伝送することで、搭乗操作と同等の操作性を提供できることを確認した。
また、災害時に光回線を使用できない場合を想定し、5G基地局と遠隔操作室の間(約750メートル)を無線エントランスで接続し、5Gのバックホール通信としての活用に加え、4台の俯瞰(ふかん)カメラの映像を伝送した。さらに、車載型の5G基地局を導入し、移動式のトレーラーハウス内に遠隔操作室を構築することで、災害現場においても短時間で遠隔操作の環境が構築可能となり、復旧活動を迅速かつ安全に進められることを実証した。
災害時では、社会インフラの迅速な復旧が急務である一方、土砂崩れなどの2次災害のリスクがあるため、作業現場の安全を確保する観点から建機を遠隔で操作する遠隔操作システムの活用が期待されている。しかし、従来のWi-Fiなどを活用した遠隔操作では建機の操作に対して映像のずれを感じるため、搭乗操作に比べてオペレーターの疲労度が高く、作業効率が低下する課題があった。特に、2台の建機を連携させて作業する場合では、建機同士の距離感をつかみ、搭乗操作と同等の操作性を実現するために、遠隔操作と映像のずれを最小化することが不可欠となる。