欧州における2018年のITベンチャーキャピタル投資先として、英国が引き続きトップとなったものの、その投資額は前年よりも減少し、欧州の他の国々が差を縮めた。
Digital Economy CouncilとTech Nationのデータによると、2018年における英国へのベンチャーキャピタル投資は前年の81億ドルから79億ドルへと低下したという。
英国へのベンチャーキャピタル投資が前年を割り込んだのは今回が初めてではないとはいえ、英国は欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を間近に控え、懸念される兆候だと言える。
Tech Nationの最高経営責任者(CEO)Gerard Grech氏は米ZDNetに対して、2017年は巨額の資金調達が複数あったと述べたうえで、「2017年は異例とも言える年であり、ベンチャーキャピタルからの81億ドルという資金調達額を上回るのは常に難題だったという点を思い出してもらいたい」と述べた。
Grech氏は「デジタルテクノロジ業界は、2018年に英国全域における地域コミュニティーの成長に力を与えた」と述べた。

提供:Tech Nation
このデータは、欧州で投資獲得を競っている英国のライバル国がその差を縮めてきているという事実も示している。ドイツが獲得したベンチャーキャピタル投資は46億ドルであり、2017年の32億ドルから大きく伸びている。またフランスが獲得したベンチャーキャピタル投資は44億ドルであり、こちらも2017年の30億ドルから大きく躍進している。2017年に業界のリーダーらは、英国への投資がドイツやフランス、スウェーデンといった国々すべてに対する投資と比べても大きいと述べていたが、もはやそういった状況ではなくなっている。
Tech Nationによると、英国はベンチャーキャピタルにとって欧州で一番魅力的な投資先であり続けており、2018年において英国企業はフランスの1.8倍、ドイツの1.6倍という投資額をベンチャーキャピタルから獲得したという。また、英国のテクノロジ業界における生産性は、英国経済全般と比較すると75%高いものとなっており、デジタル関連のスキルを要する仕事に従事している人々の平均給与はそれ以外の人々に比べると1万ポンド(約140万円)以上多いという。
2017年における欧州とイスラエルのテクノロジ関連新興企業への260億ドルという投資のうち、およそ21%は英国の投資家によるものだった。また、英国のベンチャーキャピタルによる投資のおよそ25%は、英国以外の欧州の新興企業に向けたものだった。
同データによると、英国は他の欧州諸国よりも多くのユニコーン企業(評価額が10億ドル以上で未上場のテクノロジ関連新興企業)を輩出している。その数は現時点で16社で、モバイルバンキングのMonzoやサイバーセキュリティソフトウェア企業のDarktraceなどが挙げられる。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。