英国首相は「Brexit means Brexit」(ブレグジットと言ったらブレグジットだ)と述べたことがあるが、2019年3月29日(英国がEUを離脱する日)まで、あと1年強しかない状況で、サイバーセキュリティのプロフェッショナルが解決すべき問題はまだ数多く残っている。
確実なのは、近く施行される一般データ保護規則(GDPR)が、ブレグジット(英国のEU離脱)後も英国で効果を発揮することだ。しかしそれを除けば、EUの離脱で何が起こるか詳しくは分かっておらず、多くのことがまだ交渉の途上にある。
サイバーセキュリティ業界が抱えている懸念の多くは、テクノロジ業界全体が抱えている懸念と共通している。これには人材不足の問題も含まれるが、ブレグジット後に英国が欧州刑事警察機構(ユーロポール)から離脱することになった場合に、サイバー犯罪との戦いにどんな影響が及ぶかという問題も存在する。
ユーロポールはEUの法執行機関として、サイバー犯罪を含むさまざまな犯罪に対抗するために、欧州各国の法執行機関間の協力関係を育んできた。
ブレグジット後の英国とユーロポールの関係は明確になっていない。英国は現在、サイバー犯罪に関するユーロポールの取り組みを主導している部分もあるが、退任予定のユーロポール長官Rob Wainwright氏は、BBCのインタビューに対して、ブレグジット後のユーロポールの活動に対する英国の影響は、「より間接的で、目立たないものになり、おそらく今ほどはうまく行かなくなる」可能性が高いと述べている。
しかしWainwright氏は、米ZDNetの取材に対して、英国とEUがセキュリティに関する「重要な合意」に達する可能性について「肯定的」に見ていると語っている。
「欧州における現在の脅威の深刻さについては、共通の理解が存在しており、特にテロリズムとサイバー犯罪に関する脅威や、脅威に対抗する最善の手段として、欧州のすべての国々が緊密に協力する必要があることは理解されていると考えている」と同氏は言う。
「英国がブレグジット後もユーロポールと緊密な関係を持ち続ける可能性は高い」
英国政府は、EU離脱後もユーロポールと強い関係を維持し続ける合意を結べるという見解を持っている。
英国の欧州連合離脱省の広報担当者は、米ZDNetの取材に対して、「これまでわが国は、欧州の安全保障に関して常に先頭に立って活動してきており、EU離脱後も協力関係を継続したいと考えている」と述べている。
「英国の法執行機関は、重大な組織的サイバー犯罪に対する国際協調行動を組織するために、ユーロポールや欧州のパートナーと緊密に協力しており、将来のパートナーシップの一環として、ユーロポールと特別な関係を結ぶことを模索するつもりだ」