ただし離脱交渉の経過によっては、EU離脱によって英国とユーロポールとの関係や、国境を越えたシームレスな協力関係、および協力関係によってもたらされている規制が完全に失われる可能性もある。そうなれば、サイバー犯罪者が多少これらの枠組みから逃れやすくなるかもしれない。
Kaspersky Labの主席セキュリティ研究者David Emm氏は、米ZDNetに対して、「(英国がユーロポールに所属することで)対応が容易になっていることは疑いない。これは必ずしもわれわれにだけ言えることではなく、国境を越える問題全般に言えることだ。これは、国境があるところには必ず犯罪者が身を隠せる隙間があるためで、その観点からもこの問題は重要だ」と述べている。
ユーロポールの取り組み「No More Ransom」には多くのサイバーセキュリティ企業が関与しているが、Kaspersky Labもその1つだ。この取り組みは、多国間の協力と無料の復号化ツールによって、ランサムウェアの拡散に対抗することを目指している。
「行動の前に書類仕事が必要になるだけでも大変になる。EU内では司法権の管轄が1つであるため、その書類仕事が必要ない」とEmm氏は言う。
現時点では、同じ規制や手続きの下で活動しているため、各国の警察組織はこれまで通りの活動を行っている。
英国家犯罪対策庁の全国サイバー犯罪対策機関(NCCU)でテクノロジ担当責任者を務めるPaul Edmunds氏は、「今のところ、活動には具体的な影響は出ていないが、ブレグジットによって大きな影響が出るかどうかを判断するには時期尚早だ」と語る。
同氏は、最近ロンドンで開催されたセキュリティカンファレンス「TEISS 2018」で、サイバー犯罪との戦いは国境を越えるものであり、英国の企業や国民に対してサイバー犯罪を企てようとする者が、必ずしも英国内にいるとは限らないと述べている。
「特に、高度で危険な種類のサイバー犯罪には、国際的な活動で対処するのが一般的になっている」とEdmunds氏は言う。
このような国際的観点が必要なのは、欧州各国の国境に限ったことではない。ユーロポールは世界的な脅威に対抗するために、米連邦捜査局(FBI)やその他の世界中の警察機関と頻繁に協力している。
「ブレグジットで何が起こるかにかかわらず、攻撃が国際的な性格を持っていることや、攻撃者がどこから攻撃しているかは、今後非常に重要な課題になるだろう」とEdmunds氏は言う。