英Darktraceは5月22日、日本法人「ダークトレース・ジャパン」の新体制を発表した。同社は、教師なし機械学習技術を用いたセキュリティ対策を手がける。エンドポイントセキュリティに同技術を用いるベンダーが多い中、同社はネットワーク領域で利用する点が特徴だとしている。
同社は、2013年に同国の情報機関「MI5」や諜報機関「GCHQ」などの出身者らによって設立されたサイバーセキュリティ企業。ケンブリッジ大学の数学者が開発した教師なしの機械学習技術を用い、人間の免疫システムに着想を得た、サイバー脅威の検知から自己修復までのセキュリティソリューションを展開する。ダークトレース・ジャパンは2015年に都内で開設され、2018年4月にセールスダイレクターの芦矢悠司氏がカントリーマネージャーに昇格。人員体制も当初の1人から13人に拡充した。
Darktrace アジア太平洋担当マネージングダイレクターのSanjay Aurora氏
同日開催のセミナーに登壇したアジア太平洋担当マネージングダイレクターのSanjay Aurora氏は、現在のサイバー攻撃は、主に標的を特に定めず無差別に展開するケースと、国家組織なども関与して特定の組織を標的に長い時間を費やして攻撃を仕掛けるケースに大別されると説明。同社の技術では、組織ネットワーク上での平時の挙動をセキュリティシステムが自動学習し、平時とは異なる挙動を検知すると、その影響を自動的に修復することで、いずれのケースにも短時間で人手を介さずに対処できる点が特徴だとアピールした。
特に、2017年5月に世界で感染を広げたワーム型ランサムウェア「WannaCry」は、同社の本拠がある英国で医療機関などに甚大な被害をもたらした。Aurora氏によれば、同社のソリューションを導入していた組織では、WannaCryの拡散が始まった数分後にこの動きを検知して、拡散を遮断させることに成功したという。
日本での事業実績
ダークトレース・ジャパン カントリーマネージャーの芦矢悠司氏
日本では、大企業を中心に約60社が導入しており、250社以上が実証段階にあるとし、新体制の発足で事業展開を大幅に強化する。就任のあいさつで芦矢氏は、「IoTの普及が進む中、今後もWannaCryのような大規模インシデントのリスクが予想され、ネットワーク側で脅威をいち早く検知し、迅速に対処することが求められる。パートナー各社と連携して人工知能(AI)アプローチのセキュリティを提供していきたい」と表明した。
機械学習技術を利用したセキュリティ対策は近年のトレンドになり、特に米国発のセキュリティベンダーが台頭している。
芦矢氏は、「従来はPCなどのエンドポイントに機械学習を利用するアプローチが多く、われわれはネットワークをベースにしている点が異なる。英国企業という点も国内では珍しいが、英国はじっくりと時間をかけてパートナーシップを築いていく文化だと感じており、米国企業と異なる価値を日本に提供できるのではないか」と話している。