脅威を捕える「デジタル・ハンター」に求められるものとは

森孝明 (EMCジャパン) 2019年01月16日 06時00分

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 秋は、収穫を祝う光景をよく目にします。自然や生き物と対峙しながらの収穫までの道のりは険しく、たとえ雨の中でも早起きして田んぼの水を調整するなどとても苦労が多く、中には漁に出たまま帰ってこなくなる人もいたと聞きます。そのような試練を人々は乗り越え、また来年も頑張れるようにお祝いしています。

 筆者は先日、ハンティングのメンバーと秋葉原からも近い神田明神へ参拝に行ってきました。神田明神には、コンピュータウイルス、フリーズ、強制終了など人の力ではどうすることもできないPCの不具合に悩む多くの人が参拝に訪れているそうです。日本には「八百万の神」といわれるように、あらゆるものをリスペクトする文化があります。自然のもの全てに神が宿っているということが、八百万の神の考え方として辞書に紹介されており、古くから、山の神様、田んぼの神様、トイレの神様(厠神:かわやがみ)、台所の神様などがいるそうです。

 神田明神ではデジタルにも神がいると考えられているようで、なんと防護用のお守りは、錦色の生地のものではなく、ICチップのようなデザインをしておりました。私は、デジタル空間にさえ神が宿るという考え方に衝撃を覚えるとともに、考え方の寛容さに感銘を受けました。

 そして、祭られている戦神にあやかり、最後は神頼みという意味ではなく、私たちが発見したために駆除されてしまったコンピュータウイルスを奉納し、安全を守るための厄除けとして参拝し、その後は収穫祭としておいしい食事を楽しみ、ハンター達と気力を充実させました。自然界においても一年中、色々大変なことがあると思いますが、仲間と苦労をねぎらう時を持つのは、大自然を相手にトラブルを乗り越えてきた先人の知恵かもしれませんね。

デジタル・ハンターになるために

 機械ではなく人間である「デジタル・ハンター」が、安全かどうか確認をするために膨大なデジタルデータに集中し続けるという状況は、少し日常と異なる状態かもしれません。脅威と対峙している間は、不正侵入を試みようとしてくるものや情報を漏えいさせようとしてくる悪意の存在と、同じ思考回路になっています。

 状況によっては、重要な情報が第三者に取得されたという、組織にとってビジネスインパクトのあることを組織に伝えなければならないため、精神的なストレスが蓄積されやすい環境でもあります。ハンターはいつも、そのような環境に自分がいるということを認識しておく必要があります。

 ハンティングに限らず厳しい現場では、ずっと最前戦にいるような気分になりがちだと想像します。私自身もそのような状況にいることを認識し、休みを取得してストレスを取り除き、リフレッシュして、また新たにハンティングを始めるようにしています。そうすることによってモチベーションを維持でき、また精神負荷による無用なトラブルを避けることにもなるでしょう。

 ちなみに私は、お祭りの時期には太鼓を叩いて楽しんだり、好きな音楽を聴いたり、時間があるときは、ハンティングの集中力を高めたりリラックスするための音楽を作成したりして楽しんでいます。最近は「収穫祭」という曲を作って、たまにお酒のお供に聴いています。

「デジタル・ハンター」のチカラを発揮し続けるには、時に“休息”や“別の世界”と向き合うことも大切だ
「デジタル・ハンター」のチカラを発揮し続けるには、時に“休息”や“別の世界”と向き合うことも大切だ

 もし、明日からデジタル・ハンティングを行うことになったら、膨大なデータの海に投げ込まれたような錯覚に陥ってしまうかもしれません。いきなり海に投げ込まれた状態だと、泳ぎ方や自分の位置さえも分からず、生き物を捕獲する前に溺れてしまうかもしれませんね。

 デジタル・ハンターになるためには、まずデジタル空間の仕組みを覚えることから始めるのをお勧めします。システムやネットワークといったものの仕様やプロトコルなどを学ぶことによって、それを基準に何が起きているのか考えられるようになります。そして、デジタル空間上にどのような脅威が存在し、どのような方法によってインシデントが起こり得るのかを知るために、攻撃手法を理解するとよいでしょう。仕組みを理解すると、データの海に仕切りができ、そこを基準にして、自分の位置が分かるようになります。

 生き物の生態を知ると、基準に照らし合わせて、海のどこに潜んでいるか予測が立てられるかもしれません。デジタル技術は、トレーニングや学習などでも学ぶことができます。そして、トレーニングや脅威情報は既知の攻撃手法に限られており、攻撃者もそのことは理解しています。そこで、実戦では自分ならどうするか、という視点に立ち返ることをお勧めします。

 さらに、経験のあるハンターが身近にいる場合は、そのハンターから捕獲のポイントなどを学ぶことも非常に有効です。実戦経験から得た観点や判断力は、捕獲する上で役に立ちます。これは、動物を猟師が捕獲するときも同じかもしれません。今現場では、新たなメンバーを受け入れて育成し、一緒に成長しながらハンティングをしています。

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