展望2020年のIT企業

新ビジネスモデルを創り出すサブスクリプションに賭けたベンチャー企業

田中克己 2019年01月23日 07時00分

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 「サブスクリプション化し、新しいビジネスモデルを創り出す」――。ソフトウェアやサービスの使用量や使用時間に応じた料金を計算するサブスクリプションプラットフォームを展開するビープラッツの藤田健治社長兼CEO(最高経営責任者)は創業10年超を迎えた今、IT業界から自動車や家電、機械などへと活用の広がりにワクワクし始めている。

 例えば、自動車におけるライドシェアなど次世代モビリティがサブスクリプションの必要性を高める一方で、日経MJの2018年ヒット商品番付で「西の大関」になるなど、サブスクリプションの認知度が大きく向上した。藤田社長は「うれしい1年だった」と語り、次のステップに進もうとする。

サブスクプラットフォームを展開するビープラッツ

 ビープラッツが創業した2006年は、GoogleのEric Schmidt会長(当時)がクラウドという言葉を使い始めた年だ。翌年には、AppleがiPhoneを発売するなど、ユーティリテイコンピューティング環境が整い始めた時期でもある。そんな時代に、ソフトライセンスをオンライン上で販売する三井物産系のライセンスオンラインで社長を務めていた同氏は、定額制や従量課金などに対応する新しい料金管理の仕組みが必要になると予想し、同社を退社して7人で設立したのがビープラッツだ。

 ASPからSaaSへと変わる時期でもあったので、藤田社長らはSaaS市場における“楽天”のような存在を目指した。分かりやすく言えば、SaaSの専用マーケットプレイスを立ち上げて、SaaSベンダーの販売を支援すること。だが、「オンプレミスでいい」「クラウドは怖い」などと言われて、マーケットプレイスのビジネスは広まらなかった。

 そこで、仕組みそのものをソフト会社などに使ってもらうサブスクリプションプラットフォームのビジネスに切り替えた。通信インフラを借りて通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)や光インターネット回線の卸販売が始まり、それらを販売したり、事業を展開したり企業が料金計算にサブスクリプションプラットフォームを活用し始めてくれた。使った分だけを支払う従量課金モデルの電力やガスの自由化も追い風になる中で、定額制や従量課金など複数のサービス料金体系に柔軟に対応できるよう機能拡張も図った。

サブスクの本質は事業変革にある

 この2、3年前から家電、自動車、工作機械などの製造業がサブスクリプションモデルを導入し始めている。「モノからコト」へと事業構造の転換を推し進めるためだ。ここにサブスクリプションの本質があるという。単なる課金や決済の手段ではなく、製品の提供形態がモノを売ることからサービス提供型ビジネスモデルに変革することだ。収益モデルもフローからストックにすることを支える仕組みでもある。代表例は、サービス業を目指した米GEだろう。

 特にGEのようにIoT活用の活発化がサブスクリプションの普及を加速させている。素材などを仕入れて完成品を組み立てる製造業にとって、サービス提供型ビジネスはモノの販売と根本的に異なる。例えば、クラウドや通信の使用料金は使った後に請求する。サービスの使用契約が解約されることもある。あるSaaSを全社員で使っているユーザー企業が、この3月末に3人が退社する一方、4月に4人の新入社員が入社する。その利用契約のオンオフに、サブスクリプションの仕組みが必要になる。しなければ、無駄な費用を支払うことになる。

 IT業界のように複数のサービスを組み合わせて提供するビジネスへの活用にも適する。例えば、A社のクラウド基盤とB社のSaaS、C社のSaaSをセットにして提供する上で、これからサービスの使用料をリアルタイムに計算することが求められる。その仕組みを自前で作るには、時間もコストもかかるので、同社プラットフォームを導入する企業が増えつつもあるという。

 そうした中、ビープラッツは2018年4月に東証マザーズへ上場する。ベンチャーキャピタルなどから資金調達する一方、リース会社の東京センチュリーや決済サービスのGMOペイメントゲートウェイなどと資本業務提携する。資産の有効活用や新しい決済の活用などによって、事業拡大を図るためだ。

 宮崎琢磨副社長兼COO(最高執行責任者)は「サブスクリプションは、アクセンチュアが唱えるサーキュラーエコノミーに近い」と説明する。アクセンチュアによると、「製品・部品・資源を最大限に活用し、それらの価値を目減りさせずに永続的に再生・再利用し続けるビジネスモデル」を意味する。無駄を富にするなど、新しい価値を創造するもので、シェアリングエコノミーはその一つになるという。

活用段階はまだ“一丁目一番地”に

 サブスクリプションの活用段階がある。まずは売り切りからサブスクリプションにビジネスを切り替えるための契約管理だ。いわば月額定額制といった“一丁目一番地”の活用法になる。次の段階は、ビジネスの拡大とともに、扱う商材が増えていく。あるサービスは月額、別のサービスは年額など課金のルールが異なる。請求日も月末だったり、25日だったりする。初期費用があるもの、ないものもある。仕入れたり、卸したりもある。ビープラッツはそれら複雑な管理パターンをそろえており、「この仕組みを持っているのは、世界中で当社だけだ」と藤田社長は自慢する。

 だが、ビープラッツの売り上げはまだ6億円弱と小さい。同社プラットフォームの利用形態の多くが“一丁目一番地”だからだ。単体サービスの管理に適用する段階ということ。ベンチャーに任せられないという風潮もあったが、宮崎副社長は「時間の問題」とする。今、利用するユーザー企業は3年前にサブスクリプションモデル化を企画し、仕組みを稼働させたところ。現在、企画中の企業数は3年前をはるかに上回る。

 藤田社長は「農耕民族と狩猟民族の違いもある」と指摘する。例えば、飲み放題や食べ放題など定額が好きな日本人は少なくないだろう。定額のアウトソーシングを数年間契約する日本企業があるのは、その現れにも思える。もちろん複雑な契約形態もあるが、欧米人は自分が食べた分だけを支払うといわれている。「どちらが適正なのか」と、藤田社長はサブスクリプションモデルのさらなる普及を期待する。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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