日立製作所とドイツ人工知能研究センター(DFKI)は3月8日、ウェアラブルデバイス着用者の作業内容を認識する人工知能(AI)技術を開発したと発表した。
開発したAI技術は、眼鏡型のアイトラッキンググラスやアームバンド型デバイスから作業者が注視している物体や動作の情報をリアルタイムに認識し、ディープラーニング(深層学習)をしながら作業の内容を把握する。日立とDFKIは、作業手順のガイドや逸脱行動の検知など生産現場の作業支援やヒューマンエラー防止に向けた開発を行う。
AI による作業内容の認識の流れ
このAIは、「アイトラッキンググラスによって、注視している物体を認識する技術」「アームバンド型デバイスによって、基本的な身体動作を認識する技術」「注視物体と身体動作の組み合わせで、作業内容を認識する『階層型行動モデル』技術」の3つで構成されている。
「アイトラッキンググラスによって注視している物体を認識する技術」は、装着者の眼球の動きから注視点データを抽出し、ディープラーニングによる画像認識技術を活用する。背景や他の物体の写り込みなどの周辺環境に影響されることなく、部品や工具を認識できる。
「アームバンド型デバイスによって、基本的な身体動作を認識する技術」は、腕の動きに合わせてセンサから出力される筋電位など、微小かつ瞬間的な信号から動作に関わる情報を抽出する。ディープラーニングでこれらの情報を学習し、「回す」「押す」などの腕の動きを伴う身体動作を認識する。
これら2つの技術を組み合わせて、「ネジ締め」といった作業内容を認識する「階層型行動モデル」を開発した。生産現場で想定する物体と身体動作をそれぞれ個別に事前学習することで、多様な作業を認識可能になる。これにより、「点検作業」を「ネジ締め」「ボタンを押す」などの行動としてリアルタイムに認識できるようになる。