シスコシステムズは2月6日、「データのある場所が、あなたの『データセンター』に」というコンセプトに基づく「Data Center Anywhere」ビジョンを発表、併せてこのビジョンを具体化するという複数製品の機能拡張も発表した。
中核となるのはSDN(Software Defined Networking)コントローラ製品「Cisco ACI(Application Centric Infrastructure)」のクラウド対応で、従来はオンプレミス環境をサポートしていたが、新たにAmazon Web Services(AWS)およびMicrosoft Azureといったパブリッククラウド環境に対象が拡大される。
「Data Center Anywhere」のイメージ
また、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品である「Cisco HyperFlex」は最小構成ノード数が従来の3ノードから2ノードに変更されたことで、稼働環境がブランチオフィスやリモート拠点にまで拡大されたという。クラウド管理プラットフォーム「Cisco CloudCenter」では、複数のクラウド環境をまたいでアプリケーションのライフサイクルを管理できるよう強化され、新たなエンタープライズ契約も設定された。いずれも“Anywhere”をキーワードに、従来カバーされていなかった新たな環境にカバレッジを広げる強化といえそうだ。
コンセプトを説明した米Cisco Systemsのシニア ディレクター コンピューティング、データセンター マーケティングのTodd Brannon氏は、「データセンターの構成技術や実装は複雑だが、本質としては『アプリケーションの実行』というシンプルなものだ」とした上で、現在のモバイル端末の爆発的な普及などによってアプリケーションの実行場所が大規模に分散されていることを指摘、「現在では従来のデータセンターの“外部”で大量のデータが生成されている」と語った。
Cisco Systemsのシニア ディレクター コンピューティング、データセンター マーケティングのTodd Brannon氏
つまりは、「データには既に“センター”と呼べるような中心的な場所(という概念)がなくなっており、“データセンター”自体も既に“センター(中心地)”ではなくなっているということだ」(Brannon氏)という。とはいえ、従来型のデータセンターが消滅するという話ではなく、企業内のアプリケーション/データの“センター”としてのオンプレミス・データセンターは今後も継続されるだろう。「“or”ではなく“and”の問題だ」(Brannon氏)ということだ。これが、同社が“Data Center Anywhere”というコンセプトを打ち出した背後にある認識となる。
シスコシステムズ 執行役員 データセンター/バーチャライゼーション事業担当の石田浩之氏は、個々の製品の強化について詳細に説明し、Cisco ACIについては、これまでもマルチポッド対応(2.0)、マルチサイト対応(3.0)、リモートリーフ対応(3.1)、Virtual ACI(4.0)と段階的に拡張してきたが、2019年前半中のリリースが予定される4.1でCloud ACI対応が実現される計画だ。
シスコシステムズ 執行役員 データセンター/バーチャライゼーション事業担当の石田浩之氏
HyperFlexに関しては、従来小規模構成用として準備されていた「HyperFlex Edge」が3ノード固定だったのが、最小2ノードから利用できるように変更された。これは、従来の3ノード目が基本的には監視サーバとして利用されていたことを踏まえ、オンライン監視サービスである「CISCO INTERSIGHT」で監視を行うことでノード自体は2台から運用可能としたというものだ。
個々の製品機能の拡張を見る限り、ドラスティックな変更というよりはむしろ着実な正常進化という枠内にとどまっているものが大半という印象だが、それでもACIなどのようにこれまでオンプレミス環境を前提としていた製品がマルチクラウド環境を視野に入れる形に拡張されたのはユーザーにとっても注目すべき変化と言えそうだ。