住信SBIネット銀行がデータベースをOracleからAmazon Web Services(AWS)に移行していることを明らかにした。理由はコストで、「移行中の一時的なコストは非常に高いが、それも含めて3年間でペイできると試算している」(システム開発第2部長の相川真一氏)と話す。
この取り組みは、AWSジャパンが3月5日に実施した企業のデータベース移行における支援策の記者説明会で紹介された。事業開発本部長の安田俊彦氏は、「企業で保存されるデータ量の増加に伴い、商用データベースも本格的にクラウド移行の検討対象にされ始めた」と説明、住信SBIネット銀行の事例を紹介できる機会を得たとして、この説明会を開催したという。
AWSの説明会でデータベース移行について紹介した住信SBIネット銀行 システム開発第2部長の相川真一氏
相川氏によると、住信SBIネット銀行では2017年にAWSをメインとしたクラウドへの全面的な移行方針を決定。現在は、2020年3月までに順次稼働を開始させる予定のインターネットバンキングシステム、事務処理システム、外資システムを構築中。この3つのシステムでは、AWSの「Amazon Aurora PostgreSQL」と「Amazon Aurora MySQL」を採用し、Oracle Databaseから切り替えるのがAmazon Aurora PostgreSQLになる。
インターネットバンキングシステムに関して同社は、この説明会までの直近3カ月で予備検討を実施し、現在使用しているOracle Database 11gのEnterprise EditionとAmazon Auroraに切り替えた場合を比較した。それによると、性能面ではピーク時スループットの50%向上が見込まれ、障害時のレプリケーションノードへの切り替え時間も30秒程度で完了できる可用性を確認できたという。拡張性も、口座数の増加に伴ってデータ量が増えてもAmazon Auroraでは64テラバイトまでストレージ容量を自動拡張される点を評価した。
また、Oracle DatabaseからAmazon Auroraへの移行に伴うSQLの互換性は、事前の評価ツールでは62%を自動変換できると算定された。「実際の作業では62%にやや届かないことが分かったが、それでもAWS側のサポートで対応できている」(相川氏)という。
相川氏は、SQLの変換作業など実際のデータベース移行に関するコストは「かなりの金額」になると話す。しかし、それでもAmazon Auroraに切り替えることでライニングコストを低減できることから、インターネットバンキングシステムの稼働から3年間(2020年3月~2023年3月)の総コストは、移行時のコストを含めて現在のシステム環境より下がると見通しだとしている。
同社では、移行先のクラウド環境についてAWS以外の環境も幾つか検討したとのことだが、上述の比較結果からAWSを選定したという。相川氏は、「データの増加に応じてライセンスのコストなども上昇し続けているため、このままでは厳しいと考えている。将来的に技術面も含めて要件により見合う選択肢が出てくれば再度検討し直す可能性もあるが、現状ではこの方法を選択した」と述べている。