ドイツの大手製薬会社Bayerは、サイバー攻撃を受けて社内ネットワークが侵入を受けたことを明らかにした。ただし、情報の流出は阻止された。
Reutersの報道によれば、同社は2018年前半に、社内のシステムに感染能力を持つソフトウェアを発見したという。
同社はそのマルウェアを削除するのではなく、秘密裏に監視を続けてその目的を探るとともに、そのコードを送り込んだ犯人の正体を明らかにすることを選んだ。
このマルウェアは2019年3月末に削除され、同社の調査活動は終了した。攻撃による被害は現在評価中だという。
Bayerは「データ窃盗が行われた形跡はない」としているが、マルウェアの目的や影響範囲に関する詳細は明らかにしていない。ただし同社は、マルウェアは「Wintti」と呼ばれるハッキンググループの手によるものだと述べている。
Kaspersky Labsの資料によれば(PDFファイル)、Winntiによる攻撃の目的は、2013年時点では「オンラインゲームプロジェクトのソースコードおよび実在するソフトウェアベンダーのデジタル証明書」を盗むことだった。この際盗まれた証明書を使って署名されたマルウェアが、韓国からチベットまでを含む地域で活動する政治運動家や、中国のウイグル族を標的とする別の攻撃グループによって使用されていたことが判明している。
その後Winntiは、産業スパイ行為にも活動を広げたと見られており、2016年にドイツの大手鉄鋼・工業製品企業ThyssenKruppを標的としたサイバー攻撃を行ったのも、Winntiだったと考えられている。
ThyssenKruppから「プロフェッショナル」だと評された同グループの攻撃の狙いは、同社の産業ソリューション部門から技術情報や価値の高い知的財産を盗むことだった。
ProtectWiseの調査分析チーム401TRGは、同グループは中国が2009年から2018年にかけて価値の高い標的に対して体系的に実施した諜報活動や攻撃に関与していると考えている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。