日本IBMが社長交代を発表した。何が起きたのか。舞台裏を探ってみた。
理由はグローバルでの事業推進へのテコ入れ
日本IBMが4月17日、5月1日付けで取締役専務執行役員グローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業本部長の山口明夫氏が代表取締役社長執行役員に就任すると発表した。現職のエリー・キーナン社長は取締役会長、マーティン・イェッター取締役会長は最高顧問に就く。日本人が社長に就くのは橋本孝之氏以来、7年ぶりとなる。
5月1日付で日本IBM社長に就任する専務の山口明夫氏
山口氏の略歴を含めた発表内容については第一報の記事をご覧いただくとして、ここでは関係者の話や決算内容から、社長交代劇の舞台裏を探ってみよう。
まず、今回の人事異動の理由は、グローバルでの事業推進へのテコ入れが、日本法人の社長交代にも及んだものといえる。
今回の人事異動は、米IBMの2019年度第1四半期(2019年1~3月)決算と同じタイミングで発表された。その内容を見ると、売上高が前年同期比4.7%減と、2018年度で長い低迷からようやくプラスに転じたと思いきや、またマイナス成長に沈んだ。しかも地域別に見ると、米国、欧州・中東・アフリカ、アジア・太平洋の3地域ともマイナスとなった。この状況を非常に重く見たのが、今回の人事異動につながったとみられる。
興味深いのは、イェッター氏とキーナン氏の異動だ。まず、イェッター氏は日本IBMの役職でみると最高顧問に就く形だが、米IBMシニアバイスプレジデントでIBMヨーロッパの会長職は継続する。これはすなわち、同氏が欧州の事業のテコ入れに注力することを意味している。
また、キーナン氏も日本IBMでは取締役会長に就くが、米IBMの北米担当ゼネラルマネージャーを兼務する。北米はいうまでもなく同社にとって本丸だ。この異動は、同氏が日本IBMの社長として2年間、売上高を増加させた手腕を認められての抜てきだと見て取れる。
日本IBMの売上高プラスを牽引した山口氏が社長に
日本IBMの社長交代は、こうしたIBMのグローバルでの事業のテコ入れの中で決まった。ちなみに、日本IBMの第1四半期の決算は明らかになっていないが、関係者によると、売上高プラスを維持したようだ。もしマイナスに沈んでいれば、日本人の社長が誕生したかどうかは分からないが、今回はGBS事業責任者として売上高プラスを牽引した山口氏が社長に就任することになった。
関係者によると、社内や顧客企業における山口氏への評判は、社長に日本人が就任するならば、この人だろうとの見方がかねてからあったようだ。また、他の経営幹部との関係も良好なようで、同氏が社長になったからといって、現体制の大きな変動は当面ないものと見られる。
とはいえ、最も注視すべきは米IBMの動きだ。再び業績低迷のトンネルに入ってしまうのか。今回のテコ入れによって急浮上を果たすことができるのか。日本IBMもその大きな流れの中にいるだけに予断を許さない状況だ。
山口氏は社長就任後、記者会見を開いて所信を述べる予定だ。