ガートナー ジャパンは4月17日、クラウド型オフィススイートに関して注目すべき4つの予測を発表した。今後3〜5年間に予想される重要な変化や動向を、従業員エクスペリエンスの切り口から「ワークストリームコラボレーション」「チャットボット」「仮想デスクトップ基盤」「契約」という4つの観点で考察している。
ガートナーでは、「汎用的なオフィスツールやワークプレースの機能をSaaSとして提供するもの」を“クラウドオフィス”と定義している。一般的に、電子メール、インスタントメッセージング(IM)、ファイル共有、会議(ウェブ会議、ビデオ会議、音声会議)、ドキュメント管理/編集、コラボレーションの機能が含まれ、代表的なものに「Microsoft Office 365」「Google G Suite」などが挙げられる。
4つの予測は下記の通り。
- 2022年までにクラウドオフィスを導入した企業の60%では、ワークストリームコラボレーションを駆使することで、従業員が参加していた対面型の会議の数が2019年に比べ半減する
- 2022年にかけて大企業の人事部門の40%が人事系アプリケーションに特化したチャットボットを導入し、セルフサービス化や従業員満足度の向上を試みるが、その大半は十分に利用されない
- 2022年までに仮想デスクトップ基盤(VDI)を導入している企業の40%がOffice 365の導入によって、ユーザーパフォーマンスの低下などの課題を抱えるようになる
- 2022年までに包括割引を最優先に契約交渉したクラウドオフィス利用者の80%は削減額以上の追加コストの支払いを迫られる
(1)については、ガートナーが2018年6月に実施した調査の結果から、従業員数2000人以上の大企業では、ワークストリームコラボレーションを標準搭載するクラウドオフィスの利用は、2017年の45%から69%へと拡大しており、また大企業では、従業員の43%が週10回以上会議に参加しており、多くの時間を会議に費やしていることも明らかになっている。
これらの結果から、ファイル共有を含むやりとりがメールのように散乱することなく特定のテーマにカプセル化されることや、チャット機能によるリアルタイムのコミュニケーションは少人数の会議にも適していることが、一部のユーザーに理解されつつあるとしている。また企業の担当者は、ワークストリームコラボレーションによる会議の効率化や対話型の新たなエクスペリエンスに期待しているとしている。
(2)については、人事系の業務では、ユーザーが全従業員に及ぶため、チャットボットの潜在的なインパクトは大きく、また、従来はテクノロジーの活用に保守的な傾向があるとされていた人事部門でも、HR Tech(人事領域に関する新興技術)への期待の高まりを受け、テクノロジー活用の機運が高まっているとした。
その上で、大手ERPベンダーに加え、タレントマネジメントや勤怠管理などの関連ベンダーが、チャットボット、仮想アシスタント、会話型人工知能(AI)などを提供し、またOffice 365やG Suiteといったクラウドオフィスツールとチャットボットとの連携サービスを提供するベンダーも登場している状況を挙げ、仮に人事部門が既存のチャットボットを無視して、意識的な連携や使い分けを検討することなしに、独自にチャットボットの導入を強引に進めた場合、従業員からはチャットボットが無秩序に増えていると受け取られかねないと指摘している。
(3)の「Office 365の導入によって、ユーザーパフォーマンスの低下などの課題を抱える」とは、同じデータセンター内に置かれていたVDIとオンプレミスのオフィスシステムが、Microsoftのクラウドに移ることでユーザーパフォーマンスが劣化したり、VDI構成の見直しが必要になったりするということだ。
(4)については、Office 365をはじめとするクラウドオフィスの導入提案をするソフトウェアベンダーは、通常よりも高い割引率を設定することを条件に、ユーザー数やバンドルされる機能数などが多い包括的な契約を勧める傾向があるとした。しかし、機能強化を理由としたリストプライスの上昇や、バンドルされる機能の変更による別契約の追加を迫られることもあり得るとし、初回契約時の割引率が契約更新時には適用されないことも一般的なことから、およそ3年以内に行われる最初の契約更新において、採用時の契約からのコスト増を余儀なくされるユーザーが広がるとしている。