早大 入山氏に聞く、日本企業が「腹落ち」すべきイノベーションの真実(後編)

國谷武史 (編集部)

2019-06-17 10:00

 ここ数年、日本企業にとってデジタル変革やビジネスイノベーションの取り組みが大きな経営課題になっている。概念実証などの試みも増えてはいるが、まだまだ成果は見えてこない。そこにはどのような原因が存在し、日本企業はどう克服すべきだろうか。後編では、「日本企業が真にイノベーションへ向かうため必要なもの」を早稲田大学ビジネススクール 教授 経営学博士の入山章栄氏に聞く。

前編はこちら

--企業は、存亡の危機といった究極的な状況に追い込まれなければ、大胆な変革に乗り出せないという意見も聞かれます。

 日本企業で大がかりな変革が難しい理由の一つは、トップの在任期間が短いことです。典型的な日本企業のトップの在任期間は長くても6年ほどで、変革を実現するには短か過ぎます。最低でも10年は必要でしょう。海外の研究では、次世代に高い事業価値を残せるトップの平均在任期間は13年という分析結果もあります。他方で、日本のトップが7年や8年もやると、「いつまでやっているのか」「独裁政権だ」なんて言われてしまうわけです。

 もちろん、ただ期間が長ければ良いというわけではありません。トップが責任を果たせるなら、実績を出している間はとどまるべきということです。そして在任期間が長いと、視点は目先の2~3年ではなく、10年先、あるいは20年先を見れるようになります。10年後、20年後を見て「この事業はなくなる」と分かれば、トップは危機感を持って早い段階で行動できます。

早稲田大学ビジネススクール 教授 経営学博士の入山章栄氏
早稲田大学ビジネススクール 教授 経営学博士の入山章栄氏

 大胆にいえば、日本の場合、2~3年単位の中期経営計画が“諸悪の根源”かもしれません。2年先、3年先しか見ていませんから、その計画は単なるトップの所信表明に過ぎません。逆に言えば、計画がうまく行かなければ3年でトップが辞めるということですから、トップは目先の2~3年しか考えません。

 逆に優良なグローバル企業、例えばドイツ企業などは、視点も長期的です。Siemensが典型ですが、同社のトップはなかなか変わりませんし、常に「メガトレンド」という名で数十年後を見ています。だから「IoT」という言葉もない27年前からSiemensはIoTに取り組んでいるのです。日本はここ数年で大騒ぎしていますが、SiemensにとってIoTは、普通の取り組みです。それは、やはり長期視点を持っているからだと思います。

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