電通ら、AIによるマグロの品質判定システムを開発--職人の後継者不足解消へ

大場みのり (編集部)

2019-05-31 12:39

 電通は5月29日、電通国際情報サービス(ISID)の「オープンイノベーションラボ」と共同で、人工知能(AI)をはじめとする技術を活用して職人の技術継承を目指す「プロジェクト 匠テック」を開始したと発表した。

 日本の伝統産業において、職人の技は貴重な知識資源である一方で、これらは「職人の勘」と形容されるように、体系化や言語化が不可能な暗黙知であるとされてきた。そのため、職人の高齢化が進む現在、技術継承が危ぶまれているという。そこで、膨大な教師データの収集と深層学習を活用した画像解析技術の適用で、AIに職人の暗黙知を解釈させる「プロジェクト 匠テック」を発足したと電通とISIDは説明する。

 プロジェクトの第一弾として、従業員の高齢化が深刻な課題となっている水産業界において、一人前になるまで10年は必要といわれるマグロ仲買人の「目利き」のノウハウに着目。マグロの尾部断面の目視で品質判定を行う職人技「尾切り検品」から得たデータを機械学習で継承するAIシステム「TUNA SCOPE」を開発した。

スマートフォンでマグロの品質を判定(出典:電通)
スマートフォンでマグロの品質を判定(出典:電通)

 実証実験は2019年3月27~ 31日に実施された。マグロの加工・販売を手掛けるマルミフーズが検品業務へのシステムを適用し、システム開発会社のクウジットが画像解析技術を提供した。

 同実証実験では、TUNA SCOPEのベータ版をマルミフーズの尾切り検品業務に適用して判定精度を確かめた上で、同システムによって「最高ランク」と判定されたマグロを「AIマグロ」としてブランド化して市場性を検証した。AIマグロは現在、商標出願中だ。

1. TUNA SCOPEのベータ版開発と適用

マグロの尾部断面写真と職人の4〜5段階の品質評価の結果をひも付けて尾切り検品のデータを取得し、画像解析を行うためのシステムを構築。収集したデータをもとにチューニング、深層学習、アルゴリズムの選定を行い、スマートフォンアプリとしてTUNA SCOPEのベータ版を開発。同システムをマルミフーズの工場における検品業務で試験運用した結果、職人によるマグロの品質判定と85%の精度で一致したという。

2. AIが最高品質と判定したAIマグロの販売と市場性の検証

最高ランクと判定されたマグロを「AIマグロ」と名付け、商品のブランドロゴを開発。「産直グルメ回転ずし 函太郎Tokyo」で5日間提供し、約1000皿を販売した。アンケートの結果、注文客の約89%がAIマグロに高い満足度を示したという。

TUNA SCOPEのロゴマークとアプリ画面(出典:電通)
TUNA SCOPEのロゴマークとアプリ画面(出典:電通)
AIマグロのロゴマークと回転寿司店での提供(出典:電通)
AIマグロのロゴマークと回転寿司店での提供(出典:電通)

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