アサヒビールとNECは5月17日、画像処理技術を活用した「輸入ワイン中味自動検査機」を共同開発したと発表した。検査作業員が目視で行う輸入ワインの検品の作業水準を維持しつつ「自動検査機」を導入することで、品質管理の効率化を目指す。
導入の背景として両社は、「輸入ワイン市場の拡大」と「労働力不足」を挙げる。近年、日常的にワインを楽しむライフスタイルが浸透し、2018年の輸入ワイン市場は10年前と比較して約1.5倍に拡大した。また2019年2月に発効された日EU経済連携協定(EPA)によるEU産ワインの関税撤廃などから、さらなる市場の活性化が見込まれている。アサヒビールによれば、2018年の輸入ワインの販売数量は10年前と比較して約2.3倍に拡大し、より効率的な検品体制の確立に至ったとしている。
従来、輸入ワインの検査作業員は、瓶を光に透かすことでラベルの隙間から内部に微細な異物が混入していないかを確認しており、経験と熟練した技術が求められていた。さらに、現在の輸入ワインの販売数量を検品するには、1ライン当たり約10人の作業員が必要だといい、アサヒビールは自動検査機の導入で検品作業の効率化を図るとともに、今後予想される労働力不足に対応すると説明している。また初心者でも対応できるため、労働力の確保や柔軟な勤務体系を可能にするという。加えて、作業員の成熟度に差が生まれないため、検査品質の均一化が期待されるとしている。
「輸入ワイン中味自動検査機」は、赤外光照明やカメラと画像処理技術を活用し、ワインに異物が混入していないかを確認する検査装置。作業員が検査機にワイン瓶をセットして検査を開始すると約10秒間、瓶が傾斜・旋回する。その際、液体に発生する緩やかな流れにより、ラベルの陰に隠れた異物も高精度で検出できるという。現在、アサヒビールとNECプラットフォームズが同製品の特許を共同出願している。あらかじめ瓶の形状に応じた最適な傾斜・旋回パターンの設定や、赤や白といった液の色に応じた光量、撮像タイミングを登録しておくことによって、作業員は検査したい品種を選択するだけでよいとのことだ。
アサヒビールは4月、輸入ワインの受け入れ拠点である横浜倉庫に「輸入ワイン中味自動検査機」を1機導入してテスト稼働を開始した。9月からは2機増設し、検査ラインとして1ラインを本格稼働させる。2021年以内、関西と九州の倉庫にもラインを順次導入し、全国3カ所に合計4ライン・12機で自動検品ができる体制を目指す。それにより、時間当たりの検品生産性を3倍にすると予定している。