CircleCIとAuth0、Stripeの日本法人3社は6月3日、国内のソフトウェア開発企業(ISV)やスタートアップがSaaS事業に進出できるよう支援するプロジェクト「Go_SaaS 三種の神器」を開始すると発表した。同プロジェクトは3社が主体だが、アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンも支援に当たると表明した。
SaaSビジネスでの課題とプログラムでの施策
プロジェクトの推進主体となる3社では、CircleCIが継続的なインテグレーション/デプロイ(CD/CI)開発基盤、Auth0がID管理・認証基盤、Stripeが決済サービス基盤を提供している。記者会見した各社によれば、国内のソフトウェア市場は、企業顧客の受託開発需要の鈍化とパッケージソフトを上回るSaaS需要やサブスクリプション型ビジネスへの関心の高まりが見られる一方、ISVやスタートアップがSaaSビジネスへ参入する際に多くの障壁があるという。
プログラムにおける各社の役割
この取り組みでは、3社がそれぞれ強みとする領域を組み合わせることにより、SaaSビジネスを目指す企業を技術、人材、コストなどの面から支援する。AWSも支援に加わり、SaaSビジネスを目指す企業向けの「オンボードセミナー」の開催、3社のユーザーらのコミュニティーを中心としたワークショップの実施、ビジネス開発の段階で3社のソリューションを無償もしくは安価に利用できる施策を準備している。
プロジェクトを支援するAWS パートナーアライアンス統括本部 テクノロジーパートナー本部長の阿部泰久氏は、SaaSに乗り出すISVの90%が顧客の要請に応えることを理由にしているなどの調査データを提示し、SaaSに取り組むことでサービスの開発や展開の迅速化、リソース投資の集中化、エンドユーザーのニーズのくみ取りやすさといったメリットがあり、事業面からも粗利益率の向上を図れるなど、ISVやスタートアップにとってSaaSへの進出が将来のビジネスにおいて重要と指摘した。同プロジェクトに対し、「ぜひSaaSの拡大につながるエンジンになることを期待したい」と語った。
ソフトウェア開発企業がSaaSに乗り出す理由
プロジェクトを推進するCircleCI日本法人カントリマネージャーの森本健介氏は、「アジャイル開発やDevOpsを通じてSaaSやサブスクリプションに取り組みやすい環境を広げたい」とコメント、Auth0日本法人カントリマネージャーの藤田純氏は、「SaaSの“はじめの一歩”の部分を通じて、プロジェクト参加企業のサービスが提供されるまでをサポートしたい」と述べた。Stripeジャパン 代表取締役のダニエル・へフェルナン氏は、「開発者に使いやすい決済機能を提供することによって日本でのSaaSの拡大に貢献していく」と話す。3社では、同プロジェクトを通じて今後2年で約100社の参加を見込む。
SaaSは、その登場から既に10年以上が経過し、提供される機能もCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)から近年では経理や人事、ERP(統合基幹業務システム)などに広がりつつあり、各領域で著名なプロバイダーも多い。また、SaaS事業者にとっては大企業顧客をどれだけ取り込めるかも事業を拡大させていく上でのポイントになる。
これらの点についてAWSの阿部氏は、「大企業でも(個別開発から)パッケージソフトの採用が拡大したように、今後はSaaSにシフトしていく。日本を含むアジアの企業は欧米に比べてSaaSの採用意欲がやや鈍いと感じるが、AWSのユーザーにもSaaSのメリットを広めていきたい。開発者にも(パッケージソフトより成長率の高い)SaaSにぜひチャレンジしてほしい」との見解を述べた。
プログラムの取り組みを発表したAWSジャパン パートナーアライアンス統括本部 テクノロジーパートナー本部長の阿部泰久氏、Stripeジャパン 代表取締役のダニエル・へフェルナン氏、CircleCI日本法人カントリマネージャーの森本健介氏、Auth0日本法人カントリマネージャーの藤田純氏(右から)
プロジェクトを推進する各社の代表は、「AWSも当初のスタートアップ企業のITインフラ利用から現在では大規模システムの本番環境として利用されるようになり、SaaSも同様に普及していく」(CircleCIの森本氏)、「クラウドの普及がSaaSを盛り上げる1つの契機になっている」(Stripeのへフェルナン氏)、「われわれ自身もSaaSのビジネスを成功させることで、クラウドのメリットをさらに広げていきたい」(Auth0の藤田氏)とコメントした。